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ハッピーバースデー 10

 予め連絡をして駅近くのファミレスに呼び出していた唯と一樹(いつもの暇人共)は先に到着しており、すでに山盛りポテトとドリンクバーを楽しんでいた。  さほど広くない店内で理玖はすぐに2人を見つけて、理玖は唯の隣に、帆乃は一樹の隣に座った。 「優雅な日曜日に呼び出しやがって」 「どうせ寝てるかゲームしてるかだろ」  ずばり言い当てられた一樹は帆乃に泣きついた。 「とりあえず何か頼もーよー。私は腹が減ってる、久々に白米が食べたい」 「もう金欠かよ!」 「失礼な! idのアルバムを3枚買う資金と来週の推しの生配信へのお布施の為に節約してんのよ! つーわけでここの私の支払いは呼び出した人持ちで」  せめての情けなのか、唯は注文タブレットにクーポンコードを入力して注文してくれた。一樹は隣にいる帆乃と一緒にメニューを見る。 「帆乃くんはお腹空いてる?」 「は…い……」 「食後にさ、一緒にストロベリーパフェ食べない? 帆乃くんも好きでしょ、゛ストロベリーパフェの恋模様”」 「………!」  帆乃は目を輝かせて一樹を見る。それに対して一樹はサムズアップで返す。  アネモネちゃんファン同士のやりとりなのだが、理玖は心がモヤモヤして一人で見ていた期間限定メニュー表で一樹の頭を殴った。 「痛っ! 理玖⁉ 何すんの⁉」 「別に」 「顔! 顔怖い!」 「お前は声がでかいうるせー息止めろ」 「鬼なの? 理玖は鬼なの?」  悲劇のヒロイン風にリアクションする一樹だったが、次の瞬間とある可能性に気が付いてニヤニヤ顔に変わった。 「え、嫉妬?」 「……………………何の?」 「いや、俺が帆乃くんと仲睦まじく会話してたからさー。なーんだ、やっぱお前」 「それ以上ベラベラ憶測で物を言うなら息の根止めるぞ」 「すいませんでしたごめんなさい許して下さい私が悪かったです」  高校からの付き合いは伊達じゃない。一樹は猛スピードで撤退した。 「帆乃たんはご飯何が好きなの? あ、ポテトもう一皿頼もうか? どうせ帆乃たんの分もりっくん出すし」  今度は唯が帆乃に構いだす。 「鈴野てめぇ、勝手に決めんじゃねぇよ。帆乃くんの分は俺が出すけど」 「帆乃たん、人の金で食べる肉は美味いよー。帆乃たんお肉好き?」 「え…っと……お、俺は…オムライス……が、好きです……」 「かーあいいー♡ やば、キュンでしょこれ」  唯の萌えツボに入ったのか「くぅー」と悶える。ぶんぶん頭を振るので長いロングヘアを束ねたポニーテールが隣の理玖の顔面に直撃する。 「やっぱお母さんのオムライスが好きだったりするの?」  更なる萌えポイントを追求しようと唯は訊ねたが、帆乃は少し怯えたような表情になって下を向いて黙ってしまった。 「あ、あら?」 「おい、鈴野」 「わわわわわ私⁉ 別にフツーの質問じゃ…」  唯は困って慌てる。  そして理玖は帆乃の頭を優しく撫でて、帆乃が顔を上げると微笑んだ。 「今日は別のもの食べる?」  優しく訊くと帆乃は頷いて、「ごめんなさい」と呟いた。

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