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ハッピーバースデー 11

 (そういえば、帆乃くんって未成年だし、こういう活動って保護者の承諾とか、ある程度の介入があるもんじゃないっけ? スマホも社長からの支給って言ってたし、この前もあんな遅くまで帰らなかったのに親からひとつも連絡がなかった……俺、帆乃くんのこと…)  理玖は撫でていた手を引っ込めて、帆乃は少しだけ寂しくなった。 「とりあえず、さ…何食べようか? 俺超腹減ったからWハンバーグの大盛ライス」  理玖は馴れたように注文用タブレットを操作する。一樹と唯も他に食べたいものを伝えて理玖が入力する。 「帆乃くんは何食べる?」 「………あ…こ、これの……お、大盛り」 「了解…って、んん⁉」  理玖は帆乃がメニュー表で指した『真夏の激辛キーマカレー』を大盛りで注文した。  デザートまで平らげた4人はドリンクを飲みながらまったりしていた。 「帆乃たん…見かけによらず、すんごい食べるね」 「へ…? そ、そう……ですか?」 「あのカレーはさ、デフォが大盛りで大盛りだと特盛の量になんだよ。俺と理玖も去年食べたけど……なぁ」 「死にかけた」  帆乃の胃袋は10代男子の中でもかなりわんぱくな方かもしれない、と20代の3人は震えた。 「んで、さっきちょっと聞いたけど…帆乃たんはともかく、何でりっくんまで作詞すんのさ」 「そう思うよな普通」  理玖は2人に作詞について話をしていた。唯と一樹もハテナを浮かべる事案であることに異論はなく、理玖は話せば話すほど途方に暮れた。 「てか来月って前期のテストあるからちゃっちゃと終わらせてーし……って帆乃くんは大丈夫なの? 期末とか、高3なら模試とかあるんじゃない?」 「模試なんか俺らみてーな馬鹿高校だったらどーにかなるって」  一樹は楽観的にジンジャーエールを飲み干した。理玖はその意見には納得したが。 「いや…帆乃くん成堂大の付属高校だし、俺らと格が違う」  さらっと追加された帆乃の情報に唯と一樹は咳をした。 「マジかよ‼」 「我々の大学はそこそこの奴も大体合格できる(かっこ)一部を除いて(かっことじ)くらいの学力なのだが…高校って確かくっそ頭良いよね…」 「ちょ、ちょっとググれ!」  唯はスマートフォンですぐに検索した。「成堂大学付属北成堂男子 偏差値」、結果を見ると口をパクパクさせる。 「な……な…な、なな、じゅうご…」  理玖と一樹(偏差値48)(56)は天文学的数字に衝撃を受ける。 「帆乃たん…間違っても、私たちを…参考にしちゃ駄目よ……」 「そうだ…君は俺らのような底辺と違う…選ばれしエリートなんだ…」 「え……で、でも……俺…その……もし、叶う…なら……みなさん、と…一緒も、いいなって……い、1年だけ、でも……」 (だって、初めて仲良くなれた人だから……) 「帆乃たん…あんたエエ子や」  唯は眩しすぎる帆乃の純粋に心を打ちぬかれる。 「そ、それと……俺、の…学校…明日から…前期の…中間、で…」  高校3年生の大事な時期である帆乃を都心からかなり外れ1歩先は田舎のファミレスに誘った罪悪感を大学生3人に襲う。  3人は声をそろえて帆乃に「ごめん!」と頭を下げた。 「べべべべべべべべ勉強しなきゃヤバない⁉ どうしてこんなとこいるのよ帆乃たん!」 「高3の定期考査はなぁ…全て命取りなんだよぉ…なぁ理玖」 「それを言うなぁ…!」  高3の夏、理玖はバレエの国際コンクールに出場し見事金賞を獲ったが。その名誉の代償に模試と期末テストが散々な結果となり、大学進学さえ危ぶまれたという苦い思い出がある。 (あの地獄は…もう勘弁して欲しい………!)  理玖は頭を抱えてしまい帆乃は心配そうに見守るしかなかった。  

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