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ハッピーバースデー 15
一方、理玖は今日は諦めて今度のテストに出そうな心理学の本を一冊持って、確保していた席に戻っていた。
「今日の今日では無理だっつの」
理玖は作詞に対しての愚痴をこぼしながら本のページをめくる。
「てかさ、りっくん創作とか向いてないよね」
「理玖は踊ること以外の芸術が雑魚だし。演技、歌、楽器、絵、感想文、書道…大体芸術系の実技はやばかったもん」
「文化祭の劇も見た目に反して棒読みだったから腹抱えて笑ったし」
「確かに…りっくんリズム感はあるけど音痴だもんね」
「うるせーよ。別にできなくても困んねーし」
理玖の芸術性のなさをいじっていたら帆乃が大きな本を抱えて戻ってきた。
「あ、あの…」
「帆乃くん、こっち座りなよ」
理玖は自分の隣の席を指し、帆乃は頷いて言われた通り理玖の隣に座る。
席に着くと静かに本を机に置いた。
「植物図鑑?」
「はい……植物とか、鉱石…あと星とか……名前の由来とか、あと、逸話や言葉が…な、何かの参考に……と思って…」
「へー…やっぱ帆乃くんって頭良いんだね。発想力が違う…」
感心する理玖は帆乃の相変わらずもさっとしている髪の毛を撫でた。帆乃は恥ずかしくなって耳まで赤くなる。
「りっくんも感心ばかりしてないで帆乃たん見習いなさいよ。センスないんだし」
「芸術ポンコツはポンコツなりに頑張れよ」
「あ?」
「あ……あの……図書館、だ、から…静かに…しましょ?」
年下の帆乃に指摘され3人は口を閉じた。
午後2時半を過ぎ、理玖と唯がアルバイトの為に新宿に向かう時間が迫っていた。
「今日はここまでにして、明日の昼過ぎにまたやるかー」
図書館を出た途端、大きく背伸びとあくびをしながら大学生の3人はわずかな日光を浴びる。
「明日は私が午前で講義終わるからー、帆乃たんのお迎えは任せてーん」
唯は一樹と理玖にそう威張る。
「へ⁉ そ、そんな、俺…1人で来れますから…そ、その……みなさんにご迷惑を」
「帆乃たん、これは我々が勝手にやりたいこと! ね!」
遠慮する帆乃に唯が抱き着くと、帆乃は少しだけ笑い、理玖は少しだけムッとした。
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