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ハッピーバースデー 18

 結局月曜日は一文字も出てこず終了し、翌日火曜日は一樹と理玖が帆乃を駅まで迎えに行った。  唯はバイトの時間ギリギリまでゼミに拘束される魔の火曜日で不在だった。 「鈴野はね、大学院志望だから来年からまた受験生なんだよ」 「そ、そうなんですね……一樹くん…」  理玖は表情を穏やかに努めているが、心の中では歯ぎしりをしていた。  昨日、あの後に合流した一樹も唯に便乗して帆乃に「一樹くん」と呼んでもらうえるようになっていた。未だに素直になれず「南里さん」から抜け出せていない。  悔しそうな理玖を2人は愉快に笑っていた。 「み、南里さん…は……その…今日は、ダンス…です、か?」 「うん。今日はいつものレッスンで来週からMVの振り入れが始まるんだ」 「ダンスの先生が振付なんだっけ?」 「そ。しかも今回は俺入れて9人のダンサーがいるって、昨日メッセージきた」 「へぇー…今までのidのMVにしちゃ派手だな」 「そうだな」  帆乃も崇一から゛turn up!”のミュージックビデオについて連絡を受けていた。  レコーディングと並行して打ち合わせる予定ではあるが、理玖から詳細を軽く聞くと少し震えた。 (結構大掛かり……南里さん大変そう…) 「ファンクサウンドは踊りやすいけど俺踊ったことねぇし」 (そうなんだ…やっぱり南里さんに…負担になってる? 社長が無理言ってたし) 「あー、お前基本はクラシック畑だもんな」 「華笑先生のとこでもポップスはやってるけど…ま、ダンサーの人の中にヒップホップの人とかいるらしいし、教えてもらいながらやるしかねぇんだよな」 (ロージーさんはidに華が足りないって言ってた……俺が、もっとしっかりして、しっかり表現できていれば……南里さんはegoなんてやらなくて済んだはずなのに…俺のせいで……) 「別に帆乃くんのせいじゃないからね」 「え?」  帆乃は自分の心に答えたような理玖の言葉に驚いた。 「今思ってたでしょ? 自分のせいで俺が無理してんじゃないかって」 「……な、なん、で……」 「なんとなく、かな? とにかく、香島さんと契約したのも俺の意思と責任だから。誰のせいでもないからね」 「み…みなさ……ひゃっ⁉」  理玖は帆乃を自分の近くに引き寄せて頭を撫でた。  それに対して一樹が「ひゅー」と囃し立てるので、理玖は足を伸ばして物理的に一蹴する。 (みみみ南里さんの心臓の音がまた…聴こえちゃって……あ、熱い……どうしよう) (何でだ…別に普通の友達なんだから堂々とスキンシップしてもいいのに…何だこの背徳感…というか罪悪感……半端ねぇし!)  くっつく2人を見て腹を押さえる一樹は「ら…ラブラブじゃねぇか」と恨めしい声を出す。

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