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ハッピーバースデー 24

 一樹から連絡をもらった理玖は大学敷地の奥の奥にある第10校舎に走って向かう。  薄暗い校舎に入り、階段を駆け上がって上階から隈なく探し始めるが帆乃の姿どころか人に会うこともない。すると換気のために開けられていた廊下の窓から女性の声が聞こえる。 「君! 大丈夫⁉」 「やばいって、これ…救急車?」 「とりあえず私保健センター行って看護師さん呼んでくる!」  ただ事ではない状況のようで理玖は窓から騒ぎの聞こえる方へ見下ろすと、倒れていたのは帆乃だった。 「帆乃くん‼」  理玖は帆乃の名前を叫んですぐに走り、帆乃が倒れている場所へ向かった。  階段を駆け下り、校舎を出て、出入り口と真反対の裏庭に出れば、倒れた帆乃と女子生徒がいた。 「南里くん⁉」  帆乃に声をかけていたのは理玖と同じ心理学科3年生の山江(やまえ)だった。 「はぁ…はぁ……や、山江…何で、ここ……」 「(ふる)ちゃんと資料探しに来たら、窓からこの子が倒れてるの見つけて…もしかして知り合いの子?」 「そ……だけ、ど……」  理玖は息を整えながらゆっくりと帆乃に近寄り、膝をつくと帆乃を抱きかかえた。 「帆乃くん! 帆乃くん、わかる⁉」 「南里くん、あんま揺らしちゃだめだって」  帆乃を起こそうと必死な理玖を山江は抑える。 「古ちゃんが看護師さん呼びに行ってるから…ちょっと吐いてるみたいだし、体を横向きにしてあげて」 「あ……あぁ……」  地面を見たら帆乃は少量の胃液を吐いていたようだった。  帆乃の体を横に向け、頭は理玖の膝に乗せる態勢をとる。山江は持っていたウエットティッシュで帆乃の口周りをちょんちょんと拭いてあげる。 「あのバッグと、眼鏡と…あのスマホもあの子の?」  すぐ近くに置いてあるスクールバッグは土に汚れており、厚底瓶のような丈夫そうな眼鏡はレンズにひびが入っており、スマートフォンはバキバキに破壊され液晶が砕けて基盤が飛び出していた。  それらを見た理玖と山江は背筋がぞっとした。 「何で……」 「これやばいって…明らかに誰かにやられたんだよ……警察に通報した方がよくない?」 「警察…?」 「絶対これ傷害だって」  理玖は膝の上にある帆乃の顔を見たら、見たことがない程に青くなっていた。 「山ちゃーん! 看護師さん呼んできた!」 「おーい! 倒れてる子は無事かー⁉ って理玖⁉」  看護師を連れてきたのは同じく心理学科3年生の古谷(ふるや)だった。そして古谷と一緒に一樹も走ってやってきた。  古谷が連れてきた看護師が帆乃の顔色を確認する。 「すぐに保健センターで手当てをしましょう。あなたたち手伝ってくれるかしら」 「はい」  理玖はぐったりしている帆乃を横に抱きかかえて看護師についていった。 (帆乃くん……って、こんなに軽い…のか……)

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