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ハッピーバースデー 26

「付属の3年5組って……医学系特進クラス⁉ マジかよ!」  付属出身の丸川は違うことに驚いていた。 「どしたの丸川? そんなヤバいの?」  何も知らない外部生たちはきょとんとする。なので丸川は簡潔に説明をする。 「学校(ここ)の偏差値を爆上げさせてんのが5組6組の医学系特進クラスってとこで、特に5組は1年最後の特別テストの上位者しか入れないクラスなんだよ」 「クラスに入るのにテストがあんの?」 「そうだってよ。俺には無縁だったんだけど…てか存在が都市伝説だと思ってたわ。校舎も違うし卒業式でしか会ったことねーし」  あまりにぶっ飛んだレベルの話で丸川以外の全員が「漫画かよ…」と思う。 「つまり帆乃たんってT大レベルの天才ってこと?」 「まぁ、5組で上位なら旧帝大の判定は余裕でAだな」  平々凡々な大学生たちは頭がクラクラしてしまうような話を繰り広げる中、理玖は帆乃の学生証を眺めていた。名前、そして顔写真の帆乃の眼はidのそれとは違い生気がまるでなかった。 (俺…帆乃くんの名前すら知らなかった……もしかしたら、帆乃くんにとってidは…歌は…唯一の拠り所だった……もし、そうなら……俺は、何も、何も知らなかった……) 「言いたくないけどさ、状況的に彼のことを殴ったのって橘 史哉じゃない?」  古谷がはっきりと言うと全員の空気が張り詰めた。 「いや…いやいやいや…橘さんってめっちゃ優しいしさ、俺らみたいな奴らにも気さくだし、外見も中身もジェントルメンっつーか王子様って感じだし」  そこそこ交流がある一樹は史哉を疑いたくなくて古谷の意見を否定する。理玖も今は一樹と同じ考えだった。 「とりあえず憶測であれこれ言うのは止めよう。帆乃たんにも橘 史哉にも良くない」  こういう時に一番騒ぎそうな唯が一番冷静で正論を言ったことに、唯以外の全員は驚いた。 「山ちゃん、古ちゃん、丸川、ここまで付き合ってくれてありがと。こっからは私とカズキングと…りっくんでやる」 「わかった。けど私らも彼が心配だし、無事だったかどうかは知らせてよ」 「あ、俺にもな。荷物番してやったんだし、巻き込まれて後味悪ぃよ」  3人はその場をあとにしようとすると、理玖は「なぁ」と引き留め深々と頭を下げ「ありがとう」と伝えた。  3人は笑って「人として当然のことをしただけ」と笑った。

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