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ハッピーバースデー 27

 3人が去って数分後、部屋から看護師が出てきて理玖たちは入室を許可された。  帆乃のベッドのカーテンは半分開いており、その傍らには白衣を着た担当医が深刻そうな表情をして立っている。 「あの……帆乃くん、は…」 「今のところは内臓に異常は見られません。打撲による内出血がこぶし1つ分の大きさで確認されました……あなたたち、この子の親御さん、保護者の方と連絡はとれますか?」 「……いや…それ、は……分からなくて…」 「そうですか……私の判断ですが、この子の今回の外傷に関して警察に引き渡すべきだと」 「え⁉」  山江が最初に言った「警察」という単語が医師の言葉から出てきて理玖は言葉を失う。 「何か彼の身分が分かるものは荷物にあったらこちらに…」  そう言われて理玖は持っていた帆乃の学生手帳を医師に渡した。 「これ以上はご家族以外に話すことはプライバシーのためお話できません」  医師が3人を帰そうとしたとき、帆乃がゆっくりと起き上がった。 「…お、れ……かえ、り……ます……」  帆乃はベッドに横になっていたが意識はあったらしい。ベッドから降りてよろけながら歩いて医師に近づく。 「警察……なんて、無駄です……いつもの、こと……なので……」  そして医師が持っている自分の学生手帳を奪おうとする。しかし医師も抵抗し帆乃を支える。看護師も駆けつけて興奮状態になりかけている帆乃を押さえようとする。 「無理ですよ! まだ安静にして下さい!」 「落ち着いて! ベッドに戻って!」 「うるさい! 警察だって誰も守ってくれない!」  初めて聞いた帆乃の叫び声に一樹は固まり、唯は涙が出そうになった。理玖は咄嗟に看護師と医師から帆乃を奪うように後ろから抱きしめた。 「帆乃くん落ち着いて! 大丈夫…大丈夫だから……! ごめんね…俺が気付くの遅くて…ごめん……っ」  理玖の悲痛を帯びた呟きが耳から心臓に刺さり、抱きしめられている腕の中は温かくて、帆乃は力がふと抜けると号泣した。 「う……う……ぅ……うあぁぁぁ……!」   理玖は帆乃の顔を隠すように自分の胸に収め、医師を見る。 「今日は一度、僕が責任をもって彼を引き取ります。何かあったら必ず然るべきところへ連絡をすること、約束します。だからお願いします」  理玖は必死に頭を下げると、一樹と唯もそれに続いた。  医師と看護師はこれ以上の介入は難しいと判断し、理玖たちに連絡先を告げて一旦は任せることにし、理玖たちは帆乃を引き取った。

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