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ハッピーバースデー 30
しばらくして落ち着いた唯は「バイト終わったらまた来るわ」と約束し出ていった。
1人になった理玖はズボンの後ろポケットに突っ込んでいた帆乃の学生手帳をもう一度見る。
「あ……」
『生年月日 20XX年 6月 12日』という文字を見つけた。壁にかけているカレンダーを見て今日の日付が6月11日だと確認した。
「明日……誕生日なんだ……」
「ん……」
背を向けていたベッドから声が聞こえて理玖は振り返る。
「帆乃くん…」
「み……な…さ…と……さん…」
「まだ痛む? 気分はどう?」
「痛み……は…ない……です……」
「そう、よかった……もう少し休んでな」
「あ…あ、の……ここ……は?」
「俺んチだよ」
「……ご…めん……なさ…」
帆乃はまたじわりと涙を浮かべた。
理玖は帆乃の顔を隠している前髪を上げて、親指で額を撫でた。それが気持ちよかったのか帆乃はまた眠りについた。
ローテーブルに目をやるとバキバキに破壊されたスマートフォンと割れた眼鏡が並んでいる。
(とりあえず香島さんにメッセージで連絡しとくか…)
色々ありすぎたせいで、理玖にも急に眠気が襲い、帆乃に寄り添うようにベッドに凭れて眠ってしまう。
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