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ハッピーバースデー 31
目を開けると部屋は薄暗くなっていた。
理玖は目をこすって部屋の照明を点け、壁時計を見ればもうすぐ午後7時になろうとしている。
「…やっべ、寝すぎた……」
ベッドで眠る帆乃を見ると、少し汗ばんでいた。
理玖は今のうちにシャワーを浴びようと風呂場に向かう。するとインターホンが鳴り、玄関のドアが開く。
「理玖ー、飯持ってきたぞー」
片手に紙袋を提げた一樹がTシャツ、ハーパン、ビーサンの部屋着スタイルでズカズカと上がる。
「鈴野もさっきバイト終わったって連絡あった。ま、先に食っちまおーぜ」
一樹は勝手にキッチンを使って紙袋から下ごしらえをしてきた材料が入ったタッパーを取り出し、手早く調理を始める。
理玖は何もツッコミをせず「おー…」と気の抜けた返事をして風呂場に入っていく。
数分後、生活音と料理の匂いで帆乃は目が覚めた。
「あ、帆乃くんおはよー」
「ん……あ、れ…? か、一樹…くん?」
帆乃はキョロキョロと部屋を見回して理玖の所在を訊ねようとするが、一樹は先に言った。
「理玖は風呂。すぐ上がってくるから」
「あ……はい……」
帆乃は恥ずかしくなって体育座りになり、自分に掛けられていたタオルケットに顔を埋めた。そんな帆乃の仕草に一樹はほっこりする。
「理玖ー、帆乃くん起きたー」
一樹が風呂場に向かって大きな声でそう伝えると理玖はドア越しで返事をする。
「一樹ぃ、帆乃くん今日うちに泊まっから風呂入るか訊いといてー」
「おー…………って、ええええええ⁉ 泊まらせんの⁉」
「泊まってもらうよ、心配だし」
「泊まるって、お前の部屋に⁉」
「当たり前だろ!」
一樹の驚き方が異常に大きくて帆乃は眉毛をさげ困る顔になった。
「りりりり理玖が…他人を……自分の部屋に……彼女 にもしたことないのに! あああああ明日は槍が降ってくる!」
そんな冗談を吐いていたら、ボクサーパンツ一丁の理玖が風呂場から出ていて、一樹は後頭部をはたかれた。
理玖は上半身裸のまま冷蔵庫から2ℓペットボトルのミネラルウォーターをラッパ飲みし、部屋に入るとクローゼットから部屋着のTシャツと短パンを引っ張り出して素早く着た。
この間、帆乃はダンスで鍛え抜かれた理玖の引き締まった身体 に見とれてしまっていた。
(み、南里さんの身体…腹筋とかすごい割れてる……そっか、いつも大きめの服を着てるからわかんないのか………き、綺麗……彫刻みたい……)
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