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ハッピーバースデー 34
「へーっぶちっ!」
「ゔぇ! きったねぇなぁ」
「うるさいわね! 私の神速 に感謝しなさいよぉ……ズビーッ!」
理玖の家に戻ってからは大騒ぎだった。
唯は勝手に理玖んチの風呂場でシャワーを浴び、冷蔵庫からキンキンに冷えたロング缶のレモンサワー(もちろん理玖のもの)を取り出し呑み始め、理玖は全身ずぶ濡れの帆乃に下着のサイズが中々訊けず一樹と唯に「中学生かよ」と揶揄 われ、一樹が目測でMサイズと判断し家主である理玖がファミマまで走らされ、道中「あれ? 何で俺がパシられてんの?」と冷静になって帰宅したら、一樹の尻に本日何度目かのローキックをお見舞いした。
帆乃が風呂場でシャワーを浴びてる間に帆乃の紺のスラックスと夏用長袖のワイシャツも洗濯機にぶち込んで回した。
「なぁ…一樹……制服ってコインランドリーで乾かしていいんだっけ?」
「え? 知らね。洗濯はかーちゃんにやってもらってたから」
洗濯の知識がゼロの男子大学生は絶望していた。
一方、一樹はキッチンで4人分のホットココアを手鍋で作る。
しばらくすると帆乃が風呂場から出てきた。理玖の服は帆乃が着るとやはり少し大きかった。
「あ……の……シャワー…と、ふ、服……ありがと、ござい…ます……」
「うん、ちゃんとあったまった?」
「は………い……」
「帆乃くん、すぐココア出来るから鈴野の隣に座ってて」
帆乃はコクンと頷き、一樹に言われた通り唯が胡坐をかいている隣にちょこんと座る。
「帆乃たん、すっきりしたねぇ」
「は、い……」
帰ってきてから帆乃はずっと申し訳なさそうな顔をしている。
「迷惑をかけた」と思うと、この場にいることが肩身が狭い。
唯はレモンサワーを一口飲むと、立ち上がって突然シャツを脱いだ。
「唯ちゃん⁉」
帆乃の声で一樹と理玖も2人がいる部屋を覗き込むように見る。
唯は上半身ブラジャーだけの姿になった。
その身体には痛々しい傷が、数えきれないほど痕になって残っている。切り傷は何百本はあるんじゃないか、と思うくらい、皮膚も変色している箇所が点々とあった。
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