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ハッピーバースデー 35

「ま、この傷は一生消えないって思ってる。もし途中で逃げてたら半分で済んだかもしれないけど、逃げなかったからりっくんとカズキングに出会えたし、逃げなかったから失くした6年を取り戻す以上の楽しさを知ることができた。あの時逃げなくてよかったと心の底から思ってる」  理玖と一樹は3年も一緒に過ごして初めて目にする唯が抱えていた傷は、目を背けたくなるほどに酷いものだった。  唯はシャツを着てまた床に座ると帆乃をそっと抱きしめた。 「私たちは、本当に本当に…大好きだよ。だから帆乃たんが自分から傷つきに行くようなことをして欲しくない……難しいかもしれないけど、だけどぉ……いつでも此処に来ていいしいつまでも此処にいていいからぁ……ずっといていいからぁ…泣いたって叫んだって怒ったっていいんだからさぁ……帆乃たんが抱えているものを半分コにしよ? 私たちも背負うの、全然迷惑じゃないし……帆乃たんが傷つけられる方がずっとずっと……ずっとつらいよ…っ!」  せっかくシャワーを浴びてさっぱりしたのに唯の顔はまたぐちゃぐちゃになってしまった。  一樹と理玖はバラバラで統一性のない4個のマグカップをローテーブルに置く。 「ほら、ブスに拍車がかかる前に飲み干せ」  一樹は唯の背中を叩いてマグカップを渡してココアを飲ませた。  理玖は帆乃の隣に座って、オレンジのマグカップを渡した。帆乃は受け取ると一口、ココアを飲んだ。 「美味しい?」 「う……うぅ………おい、し……で……ゔぅ……ごめ、ごべん……な、さ……な、な……泣いて、ばっか…で……んんぅ…」 「気にしないで。ゆっくりでいいから、ね?」  帆乃は泣きながらもココアを飲む。詰まりながらも一樹に「美味しいです」と伝えたら一樹は嬉しそうに笑った。

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