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ハッピーバースデー 37

「あ゛ー…もう1ヵ月分の体力使った……」  ヘトヘトになった理玖はローテーブルの上を片し洗い物をざっと済ませると、床の上で大の字になって仰向けになる。  テレビも消して、音楽も聴いてなくて、静かな空間に帆乃の寝息が理玖の耳をくすぐる。  むくりと身体を起こして、隅に置きっぱなしの濡れてしまったスクールバッグとそのそばに置いた壊れた眼鏡とスマートフォンに目をやる。 (帆乃くん、最初はどこか鈴野に似てる気がした……鈴野はやっぱ芯が強くて目標の為に突き進むことができていた……てかアイツがアニメ見たときとか以外で泣いてるの見るの初めてだったな)  帆乃の寝顔に近づき、帆乃の前髪を少し上げて顔を見る。 (鈴野は橘さんがやったって……橘 帆乃…橘 史哉……全然似てないけど……血縁者かもしれない……いや、憶測はよくない。ちゃんと帆乃くんか橘さんから聞くまでは考えるのはよそう)  色々と思いながら帆乃を見ていると、ブカブカのTシャツから肌が少し見え、理玖は息を呑んだ。 (なんだ……あれ……火傷…? てか鈴野と同じような…)  帆乃の肌が白いせいで余計に痛々しく映る。 「帆乃くん……俺、本当に君のこと何も知らなかった……ごめん……馬鹿だよな…ホント」  泣きそうな、叫びそうな、一つの糸が切れたら暴れそうな衝動に駈られる。  帆乃から手を離し、理玖は自分の左手首を右手で握って震える。 「………ぃ……」  微かな声が発せられて、理玖は顔をあげて耳を澄ませる。 「……ぃ……で…す………ご………な…ぃ……」  少しうなされているように帆乃は寝言を呟いていた。  ___ 好きでごめんなさい  ___ ずっと一緒にいたいです  ___ 行かないで、南里さん、行っちゃやだ  ___ 好きになって、ごめんなさい、南里さん

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