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snow drop 7

 唯と一樹は帆乃を駅まで見送る。 「帆乃たん、今度の日曜とか空いてるの?」 「多分レコーディングが始まると思うので…どうだろ……」 「じゃあ週末遊べないの⁉ 会えないの⁉ やーだー!」  唯は駄々をこねる。すると一樹は何かを閃いた。 「じゃあ帆乃くんが土曜に理玖んチに帰ってくればいいじゃん。したら夜通し理玖んチで遊べるし」 「あ?」  一樹のアイデアに唯は一気に明るい顔になる。 「よし、次の土曜の夜は理玖んチで〝金太郎電車6”の30年運行な」 「何時間居座るつもりだお前ら」 「はい決まりー! 帆乃たんとの楽しい夜を糧に今週も生きてゆくよ!」  唯は帆乃に抱き着こうとした、が、理玖はそれを許さず、唯の頭を片手で掴んで阻止をする。「いだあ゛ー! 目が! 目がぁ!」と某大佐のアレをやっている隙に理玖は帆乃を連れて改札を抜けた。  ホームに到着するとタイミングよく新宿行きの電車が来たので、少し駆け足で乗り込む。  日曜日の昼間で席が空いていたので2人は並んで座ると一息ついた。 「なんだかあっという間って感じです」 「バタバタしちゃったよね、ごめん」  理玖が労うように帆乃の頭を撫でると、帆乃は首を横に振った。 「誰かと…友達と次の約束をするってこと初めてで…それに……」  少しだけ下を向いて赤くなって、口を両手で隠してみせる。 「理玖さんと…好きな人とずっと一緒にいて、いいんだなって……ちょっとドキドキします」  理玖は微笑んで冷静に帆乃を見つめているが、心の中は帆乃が可愛すぎて悶えて大暴れしている。 「あ、そうだ。帆乃くん、眼鏡なんだけどさ…」  理玖は思い出してリュックから自分の伊達眼鏡を取り出す。 「つけるだけならとりあえずこれ使う?」  ドン・キホーテで適当に買った黒縁眼鏡を帆乃は手に取る。 「……もう掛けなくていいって思ってたんです。ちゃんと理玖さんを見たいなって」 「え?」 「レンズ越しじゃ、たまに曇ったり、汚れたりするから…その…えっと…」  帆乃は色々言葉を出そうと困る仕草も理玖は愛おしくてたまらないが、抱きしめたりキスをすることをぐっと堪えた。 「わかった。それは俺からのお守りってことで」 「お守り? ですか?」 「うん…それ買ったのって、MVの反響が凄すぎて鈴野から顔バレしたらヤバいって忠告されて急遽買って、ちょっと落ち着くまで掛けてたんだ」 「あ…そういえば…」  帆乃は理玖に渋谷で助けられた日のことを思い出した。あの日、理玖は今手にしている黒縁眼鏡をかけていた。 「ヤバいって思ったらこれで隠して、俺と2人の時は外して、ちゃんと帆乃くんの綺麗な眼を見せてくれたらいいよ」 「……ふふ…やっぱり、理玖さん、王子様みたいでドキドキします」  昨日までの帆乃からは考えられない笑顔や言葉、理玖は安心していた。  自分の存在が、一応は帆乃の助けになってるのかもしれないと実感している。

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