91 / 175

snow drop 10

 帆乃が機種を決めたので、崇一と帆乃は手続きをしにカウンターに向かった。  その間、理玖はすぐ近くのスマートフォン関連のアクセサリーやケースが並んでいるコーナーをウロウロして時間をつぶすことにした。  理玖は自分のスマートフォンを見ると、グレーの手帳型で布製のケースは端の傷やシミが目立っていた。 (この茶色いのって、去年だっけ? 回転寿司で鈴野のヤローが甘ダレ零して俺のスマホにダイレクトにかかったやつ…くっそベタついてキレたわ)  この時を回顧し反省し、新しいケースは布製をやめようと決め、頑丈そうなアルミ製やハードシェルのケースを見回る。  そこに並んでいた中で、空色のグラデーションが綺麗なケースを見つけ、すぐ横には深海のような藍色グラデーションと色違いのケースがあった。空色の方を手に取りじっくりと見る。 (この色……初めて会ったのが〝sky high”のMV撮影だったのもあるけど、帆乃くんってイメージだなぁ…)  一方、機種変更の手続きがそろそろ終わりそうな崇一は、店員が裏に引っ込んでいる間、少しだけ辺りを見回す。 「あんれー? 南里くん、その辺にいるって言ってたのになぁ」 「……あの、社長…」 「ん? どうしたの?」 「俺のこと……その……家のこと…ちゃんと……その…大切な友達には、言った方がいいのか…黙った方がいいのか……わからなくて…」  帆乃は下を向いたまま話す。 「今回のことで、多分…り……南里さん、には…少しだけ勘づかれてると、思うんです。その…体も、見られたので……り…南里さんは何も言わないんですけど…」 「そうか……でも帆乃くんは言葉にできる? 今の自分の状況を」  そう問われると帆乃は首を横に振った。 「俺やハナから説明するのは簡単だけど、それは違うじゃん。帆乃くんはどうしたい? 知って欲しいのか、知られたくないのか」 「………分かりません………でも、なんか…後ろめたいような、気持ち、あるので…」  崇一は帆乃の背中をトンッと叩く。 「簡単なことじゃない、だから帆乃くんの気持ちがもっと固まってからでいいよ」 「………はい」  肩の荷がほんのわずか下りたようで、帆乃は少しだけ顔をあげた。

ともだちにシェアしよう!