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snow drop 14
4人でケーキを切り分けて食べながら、理玖は崇一に「宿題」を渡す。
「歌詞、とりあえず出来ました」
「ありがとう。基本はこのまま使うけどロージーや帆乃くんのレコーディングをする上で少し変えるところもあるかもしれないけど」
「それは構いません。俺はド素人なんですから」
USBを受け取った崇一は一旦机の上に置いた。そして帆乃もスクールバッグから1枚のルーズリーフを出し、それを崇一に差し出す。
「俺も出来ました……」
「お! 帆乃くんもテスト期間だったのに早いねぇ。あとでコピー取らせてもらうよ…」
崇一はルーズリーフに書かれた歌詞をじっくり読む。華笑も崇一の隣にきて覗き込んだ。
「………やっぱ帆乃くん何かあった?」
「うえっ⁉」
帆乃はそう指摘されると気まずそうに崇一から目を逸らした。華笑はそんな様子の帆乃と歌詞を見比べる。
「帆乃くん、これもしかして南里くんのこと?」
「え、え、ええ、え⁉」
「あなた達…付き合ってる?」
「なななななななななないです! そ、そんなこと!」
帆乃は隠さないといけないと思い必死に首を横に振るが、隣に座っていた理玖が帆乃を抱き寄せて、今度はがっつり抱擁した。
「帆乃くん、華笑先生には隠し事無理だから」
「で、でも、俺はいいけど理玖さんに迷惑が…」
「俺は大丈夫だよ。つーわけで俺と帆乃くん、華笑先生の言う通りの仲です」
あまりの予想外な現実に崇一はムンクの「叫び」のような表情になる。そして華笑はニヤニヤと悪だくみするような目をしている。
「へー…へぇええ…『理玖さん』、ねぇ」
「ふえ…」
「通りで来た時から甘い雰囲気漂ってたと思ったわ。南里くんのことだし、もう手ぇ出したんじゃないの?」
「…………………清い交際をしています」
香島夫妻は同じ気持ちになった。
(あ、これ寝たな。手ぇ出したな)
「まぁいいんじゃない? 帆乃くんも幸せそうで、明るくて、言葉も信頼している人がいるからスラスラと出てきて……全部前向きに変化してるみたいだし、ねぇ?」
華笑はすんなりと受け入れたようで、否定する要素はないと言わんばかりに崇一を宥めた。
崇一は魂がまだ半分ほどしか戻ってない状態だが「そうだね」と華笑に同意した。
「あの…帆乃くんが制服着てるとき…は、ひ、控えてね? 南里くんが青少年なんちゃらで捕まっちゃうから、ね?」
「それは……はい」
「絶対頼むからね! 自制してね!」
理玖の曖昧な返事に崇一は念を押した。
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