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衝動と慟哭 2
1限目の授業が終わり、次の授業やゼミの時間まで3人は何処かで暇を潰そうと思い中庭に出た。
「南里」
中庭の大きなソメイヨシノの木の下にいた橘 史哉が理玖に声をかけて近づいてきた。
___ 私は帆乃たんが倒れたのは橘 史哉のせいだと思ってる。
土曜日の唯の言葉がフラッシュバックし、理玖は一瞬、呼吸が止まった。
近づく史哉の表情はいつものようにTHE キラキラ王子様なのだが、目を見ると怖くなって嫌な汗がじんわりと浮かぶ。
「南里、丁度良かった。今さ、ちょっと用があったから連絡しようとしてたんだ」
「俺、ですか? あ、また卒論のこととかですか?なら」
「違うよ」
理玖が誤魔化すようにいつも通りの会話をしようとしたが史哉は堂々と遮った。そして理玖の隣にいる唯と一樹を気にするような視線を送るが、唯は一歩も動こうとしなかったので諦めたようなため息を吐いて、理玖に向きなおした。
「南里さ、少し前に白金台の住宅地で成堂大 の付属高校の制服着た子と歩いてただろう?」
「………はぁ」
理玖は否定しなかった。しかし怪訝な表情へ徐々に変化する。
「あれさ、俺の弟なんだよね」
史哉がそう自嘲するので、理玖の胸の奥で怒りが芽生えた。
そして予想していた嫌な事実を突きつけられて一樹と唯はショックを受ける。
「付属高校って都内でも有数の進学校って知ってる?」
「まぁ…ちょっとは…」
「俺の弟は医学系進学クラスで、今3年生…大事な時期っていうのはわかるだろ?」
「はぁ…」
「どういう経緯で南里が弟と関わったのか知らないけど…あんな時間に一緒にうろつかれると弟の世間体や今後に影響しかねない。申し訳ないが、二度と近づかないでくれ」
理玖は拳をグッと握って、史哉の方を見る。
「…俺、あの日は橘さんの弟さんが街中でチンピラにカツアゲされそうになっていたので助けただけですし、大人として未成年を安全な場所まで送る行為は当然のことだと思います」
「……南里、俺は君とは仲良くしたかったんだけど…」
そう言いながら史哉はスマートフォンを取り出して理玖たちに画面を見せる。
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