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衝動と慟哭 8

 帆乃は震えるスマートフォンを出すと、一樹からの電話だった。  廊下を小走りし、階段の下に着いたら電話に出る。 「もしもし…」 「帆乃くん、さっき大丈夫だった⁉ 先生とかに何か言われた?」 「どうして一樹くんがそれを……俺も何が何だかわからない状態で…」  帆乃は素直に混乱している気持ちを伝えた。  そんな帆乃の状態を察した一樹は一呼吸おいて、帆乃の身に何が起こったのかを説明することにした。 「SNSで帆乃くんと理玖の画像と、帆乃くんが売春してるみたいな内容の投稿が帆乃くんの高校関係者の中で流れてきたんだ。俺らの同級生がそれを教えてくれてさ」 「それは俺も…さっき見ました。先生がプリントアウトして……」 「多分、投稿時間を考えたら俺らが理玖を止められなかったせいだ……」 「え……」  帆乃は驚く。 「何で理玖さんが…」 「それは……ってちょ、鈴野⁉」  どうやら一樹のスマートフォンを唯が奪ったようで一樹は慌てていた。 「帆乃たん、もう教室行ったの?」 「唯ちゃん……いえ、まだ指導室から出てきたばかりで…」 「もし帆乃たんが怖くなったらすぐに逃げて。うちら、帆乃たんの学校のすぐ近くの区立公園にいるから」 「へ…? どうして…」 「当たり前でしょ! 帆乃たんは私らの大事な友達で親友の大事な恋人なんだから!」 「大事な……」 「私たちも話があるから、絶対に来なさい。帆乃たん来るまで待ってるから」  唯の言葉には嘘はなく、帆乃は安心して少しだけ我慢が切れて泣いてしまう。 「唯ちゃん……あの、ね……俺、ちゃんと…理玖さん…守ったよ……理玖、さんは…俺、を…助けてくれた人って、ちゃんと言った……」 「うん……ありがとう」 「待ってて…学校、終わったら必ず行く…」  帆乃は通話を切ると袖で涙を拭きながら教室に戻る。  丁度昼休みの最中で、教室棟は賑やかだった。帆乃が自分のクラスに戻ろうと3年の教室の前を通ると、廊下にいた生徒がほぼ全員帆乃を見た。 (え……何……)  帆乃が通るとヒソヒソ何かを言われている、笑われている。異様な雰囲気を感じながら3年5組に戻り、自分の席に座る。 「なぁ、お前マジで迷惑なんだけど」  席に座るなりクラスメートが数人、帆乃を取り囲んだ。 「普段何も喋らねーし幽霊みたいなさ、そんで勉強だけはやってます感、目障りだったんだよな」 「ここの制服着たまま売春なんかしてんじゃねーよ。推薦に響いたらどーすんだよ」 「てかお前ソッチだったんだ。キモ」 「え? もしかしてチンコしゃぶってくれんの?」 「俺男はアレだけどアナルセックスに興味あんだよねー。ヤっちゃっていいわけ?」  帆乃はあまりの多人数からの攻撃に反論すらできなかった。  机の横にかけているスクールバッグを手に取ると、すぐに立ち上がって教室から逃げた。そして上履きのまま外に出ていく。  途中警備員に呼び止められるが、逃げて逃げて、唯と一樹の元へ急いだ。

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