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眠り姫と王子様? 2
理玖が閉めた扉の音がした途端、一樹は理玖の本棚を漁った。
「あった!」
そう言って手に取ったのはDVDが入ったケースだった。
「これだこれ、やっぱさすがに手元にあったな」
「なにそれ?」
唯と帆乃は一樹が持ってきたDVDを見る。そのパッケージには『安西バレエカンパニー特別公演 眠れる森の美女』と書かれていた。パッケージの写真にはカーテンコールで主宰者を中心に出演者全員が並んでいた。
裏側には説明と出演者や主なスタッフの名前などのクレジットがあった。
_安西バレエカンパニー所属のプロバレエダンサーと将来有望なバレリーナたちによる夢の競演。オーロラ姫役はカンパニーのプリンシパル・崎元ナノハ、そしてデジレ王子役には国際コンクール入賞を果たした高校生バレエダンサー・南里理玖が演じる。
「ぷ、ぷりんしぱる? って何?」
「さぁ?」
「えっと、プリンシパルっていうのは……バレエ団の中で主役級のバレリーナのことです、確か」
馬鹿とかしこの差が露呈した。
一樹が慣れたように理玖のDVD再生できる据え置きゲーム機を起動し、DVDを読み込ませる。
「これでも見ながら飯食おうぜ」
「いいねぇ! 私りっくんがちゃんとバレエやってんの初めて見るし」
「理玖がコンクール以外でちゃんと踊ったのは後にも先にもこれだけらしいしな」
一樹は買ってきたものを湯煎したりレンチンしたりして夕飯の準備をする。帆乃もそれを手伝いながらテレビをチラチラと見る。
最初は貴族たちの舞踏会のようなシーンで、どうやら赤ちゃんの生誕祭らしい。
華やかな色のチュチュを着た女性たちが足並みを揃えて踊っている。
唯はスマートフォンであらすじを読みながらレモンサワー片手に映像を見る。
「ここはオーロラ姫が生まれたお祝いのシーンで、あの人たちは妖精なんだって」
妖精は次々とソロダンスを踊る。
「うん、まだ次の幕じゃないとオーロラ姫出てこないっぽい」
「んだよ。じゃあ俺風呂入ってこよーっと。帆乃くんは?」
「あ…俺は見ていたいので、あとで」
「ふーん。鈴野は?」
「カズキングのあとでシャワー浴びるから風呂でシコんなよ」
「するか!」
一樹が風呂から上がって、入れ替わりで唯が風呂に入って上がって、くらいでやっと次の幕に進んだ。
王様と王妃様が登場して、周りの民衆が嬉しそうに踊っている。民衆がざわめきだすと、満を持して主役の可愛らしく美しいオーロラ姫が登場した。
「え」
「あ?」
「んん? あれ? あれ、あの金髪の人?」
画面のオーロラ姫は金髪ではなく黒髪で、スタジオで理玖に高圧的だった人物とは同じだと思えないくらいに可憐で可愛らしく、楽しそうに踊っている。
「さすがプリンシパル……」
「あれがりっくんどやしてた人? うっそーん……」
「理玖はこんな可愛い人にトラウマ級のスパルタ教育を受けてる…んだよな?」
当時の理玖を知る一樹は、リハーサルの度に学校でグロッキーになる理玖を思い出した。全ての原因はあのオーロラ姫だった、はず。
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