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番外② やっぱり嫉妬する 1

 6月の中旬、idのアルバム発売に向けて新曲3曲のレコーディングに入った。  と言っても帆乃の活動時間を考えると土曜、日曜が休みのこの2日で終わらせないといけない、超ハードスケジュールであった。 (※idの曲はレコーディングスタジオを借りるお金がないので簡易で作った事務所の防音室で毎度レコーディングしている)  初日は朝から軽くボイストレーニングで準備運動をし、まず理玖が作詞をした「衝動と慟哭」を歌う。  今まで歌ったことのないハードロックサウンド、そして理玖の書いた詞はタイトルの通りに「鬱憤」「苦痛」「積怨」「怒り」が解放されぶつけられている。そんな感情をとうに忘れた帆乃の歌唱は、技術は申し分なかったがロージーからOKを出されるほどではなかった。 「んー…帆乃ちゃん、ちょっと休憩しましょうか」 「はい…」  帆乃はそう言われてボーカルレコーディング用の2畳ほどのブースから出る。ロージーはペンを回しながら考えるような仕草をする。 「ちょっと歌詞いじっちゃおうかしら。あまりにストレートすぎて帆乃ちゃんには難しいわよねこれ」 「え……」 (やだ…理玖さんがいっぱい俺の為に頑張ってくれたのに!) 「待ってください…! 次はちゃんとしますから、それだけは…」 「と言ってもねぇ……作詞ド素人とは思えないくらいに人間の本能からの怒りを描いている歌詞だし、帆乃ちゃんって心の底からマイナスな…こう、誰にも理解されないほどの激情とか醜い感情が沸いたことがある?」  ロージーにそう指摘されれば胸が痛む。帆乃は感情を殺して生きてきた、そのツケがこんな形で回ってきた。 「……下のスタジオに行きましょうか。7時からダンサーチームの練習が始まるらしいわよ」  ロージーにそう言われて壁時計を見ると、もう夜の7時を回ろうとしていた。レコーディングは朝の10時から始まっていたので、もう9時間近くOKテイクが出ていないことになる。  帆乃は自分の出来なさ加減に嫌気がさして泣きそうになった。  ロージーは「ほら、行くわよ」と帆乃を連れて、同じビルの地下にある華笑のダンススタジオに向かう。

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