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番外② やっぱり嫉妬する 4
ポーズを解くとダンサーたちは安堵したように座り込んだりした。半分なのに相当ハードなダンスだったことが窺える。中でも理玖は四つん這いになって倒れこむ寸前だった。
そんな理玖にナノハは近寄って、息をする理玖の背中を叩いた。
「まぁまぁ出来たんじゃない?」
「へ⁉」
「半分で息切れしてたらライブじゃもたないわよ。もっとスタミナつけなさい」
「あ……あざす」
一言でもナノハから褒められたことが嬉しくて理玖は頬を赤らめてニヤニヤしてしまう。
(え……何でそんな顔……俺見たことないのに)
※帆乃は理玖に対して異常なまでイケメンフィルターがかかってる為、ニヤ面がニヒルな笑顔に見えているだけです。
そんな2人の入り込めないやり取りを見せつけられた(と思っている)帆乃はすくっと立ち上がり、離れた場所でダンスを見ていたロージーの元へ速足で歩く。
「ロージーさん、今なら歌えます」
「あらん? ふふ、そうね…今なら歌えちゃうわね、いいわよぉ…その表情 ♡」
帆乃とロージーはダンサーたちに会釈をし、スタジオをあとにする。
理玖はそれに気が付いてスポーツドリンクを飲みながら「帆乃くん」と呼びかけるが帆乃は振り返らない。
その時の帆乃の顔は、ぷーっと頬を膨らませて「おこ」の状態だった。
「あ、あれ……?」
「ん? 理玖くん、どしたの?」
ソフトモヒカンの男性ダンサー、マミー が心配そうに理玖を覗き込んだ。
「俺、何かした?」
「あー、idくん? そういや俺がセンター出たとき、すんごい悲しそうな顔してたな」
「え⁉ 何で⁉」
「あれは嫉妬よ」
間に入ってきたのは、ナノハと一緒にラストのサビで踊るキャップを被ったピンク髪の振付師 、あーみん。マミーがセンターの時に隣で踊る彼女も帆乃の顔が見えてたらしい。
「嫉妬するオンナの顔って感じだったわね」
「オンナって…あの子、男の子だろ? キレーな顔してっけど」
「えー、だってidと理玖くん付き合ってるでしょ」
理玖はスポーツドリンクを盛大に吹いた。
「嫌でもわかるわよ、あんまーいフインキ出してきちゃってさぁ」
「雰囲気 ですよ、あーみんさん。あー、だから本名で呼んでたのかー」
マミーはどこで納得したのかよくわからない。そしてあーみんは理玖の背中を叩く。
「珍しくナノハちゃんに褒められたらへらへらしちゃうの分かるけど、事情を知らない人から見れば浮気みたいに見えちゃうわよねー。あとでちゃんと弁解しとかないと大変よー」
年長者のアドバイスを聞き、理玖はひきつった様に笑うしかない。
そして防音室に戻った帆乃は理玖への嫉妬と自分への嫌悪の怒りを爆発させ、「衝動と慟哭」を一発でOKを出した。
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