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真夏の逃亡 2

 そしてアルバム「本能と自我」のリリースを記念したidの初めての無観客ライブも近づいており、そのリハーサルも急遽郊外の貸しスタジオを押さえて厳戒態勢で臨むことになった。 「ふた駅前で降りてタクシーで会場まで向かえって言われたしな」 「そうだよねー。マスコミとかは謎にされればされるほど深追いしたいもんだよね」 「俺と香島さんが一番ビビってんだよ、この状況は。帆乃くんの力ってやべぇなって、改めて思ったよ」 「そう? 帆乃たんだけじゃなくてりっくんの力もあると思うよ。というかidとegoをBL売りしてね? って思ったもん…この歌詞カードの写真」  唯は歌詞カードを出してidとegoの写真を見せた。 「私としては安定の帆乃たんとりっくんのいちゃつきなんだが、知らない人からしたら異常よこのいちゃつきは」 「まぁ…それはフリー演技しながら接近して密着しろって言われただけだし、そうなるだろ」  2人の動きから切り取られて選定された写真は、悲哀とエロスを纏うようなものばかりであった。 「特にこれなんて私は尊すぎて死ねる」  唯が指したのは、idがegoに駆け寄るソロショット。idの指先はegoを求めるように伸びていて、idの頬に涙が伝っていた。  そしてページをめくると、唯の次に推せる写真が出てきた。  egoがidと対面座位のような体勢で見つめ合い、idの白いローブドレスの裾で2人の口元を隠し、見ている人のエロい想像力を掻き立てる2ショット。  idの長い前髪の隙間から見える瞳はいつもの帆乃とは違う。egoのメイクも黒のアイラインとグレーのアイシャドウで施された妖しい雰囲気で、唯の目の前にいるスッピンの理玖とは骨格以外別人だ。  麗しい美少年と堕ちた美青年の禁断の関係を彷彿とさせる写真ばかりで唯は初見の時に3秒ほど気絶した。 「この対面座位の写真の時さー…マジでしたの?」 「……………するわけねーだろ」 「何よその微妙な間は⁉」 「仕事中なんだからするわけねーだろ! 寸止めに決まってんだろーが!」  本当はしていた。  「sky high」の撮影と同じような真っ白い背景のスタジオで、帆乃はまるでお姫様のような白いローブドレスを着て、理玖は反対に上下黒の競技用社交ダンスの衣裳(レンタル)を着る。  コンセプトは「真逆のidとegoの融合」、なので華笑の案で理玖がレッスンの課題発表で踊った曲「A Thousand Years」に乗せて2人で自由演技をした。  あまりに世界に入りすぎて2人は気付かなかったが、本当にキスをしてしまいスタッフたちは驚いた。あとから崇一がかなりフォローを入れてくれたようだったが理玖だけ厳重注意を受けてしまった。  こんな話をすればしばらく笑いのネタにされるのは目に見えてたので理玖は絶対言わないでおこうと決めた。

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