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真夏の逃亡 5
午前10時のスタートに向けて、演者、スタッフと全員が慌ただしく動く。
ダンサーチームはいつもの練習着の上からメッシュ素材で蛍光緑色のゼッケンを着oyu用する。理玖のゼッケン番号は「1」、ナノハは「2」、と割り振られてた。
音のチューニング、照明のシュート作業も完了し、ダンサーチームはリハーサル会場に入った。
本番と同じステージが組まれ、位置番号も寸分狂わず貼られている。
17歳の時の舞台以来の雰囲気に、理玖は一瞬だけゾワリとした。
「0」の位置を目にし震えそうになると、背中を思い切り叩かれた。振り返れとナノハが小さく笑っている。
「今回0番が多いの、アンタなんだからしっかりしなさい」
「ナノハさん……」
「0番のプレッシャー、案外気持ちいいもんよ」
元プリマドンナの言葉は力強く、理玖は少しだけ脱力し、「0」の前で一度だけフェッテをする。
「よし!」
理玖はリノリウムが敷かれたステージに踏み出した。
帆乃の衣裳は、オンラインライブならではの魅せ方を生かすために真っ白なシャツ、ローブ、ズボンだった。
先に映像チェックをするためにローブのフードで美少年フェイスが隠れてしまっていた。
「南里くーん、ゼッケン脱いでスノドロのローブだけ着てー」
ステージ上でウォームアップする理玖を華笑が呼び寄せて、理玖が駆け足で向かうと帆乃と同じローブを渡された。
「これ暑いんスけどぉ…」
「文句言うなー。1曲くらい我慢なさい」
渡された白いローブを羽織って理玖と帆乃は同じような恰好になる。すると理玖はすぐ近くにいた帆乃の肩を抱く。
「ペアルックだね」
「ペアルック、ですか? …ふふふ」
帆乃は何だか嬉しくなって笑ってしまう。
「はいはい、2人でラブラブモードにならないのー。行ってきなさいっ!」
華笑に背中を押されて、2人はステージに向かう。
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