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真夏の逃亡 6

 舞台進行と演出はいつもMVの監督をしている小泉が務めており、小泉はマイクを通して全体に指示を出す。 「では、映像チェックを演者含めて行います。まずは…”sky high”なので、idはA段で、egoは下手(しもて)2番……idはそこ立って、音鳴ったら軽く動いて、egoは振りを踊って下さい」  2人が位置につくと、スタジオが暗転し”sky high”のサウンドが流れた。  2人だけに白いスポットライトが当たり、すぐにステージ全体に高速に動く空が投影される。2人がまるで空に呑み込まれ、空の一部になったような不思議な演出だった。  理玖は練習通りの振付で動く。力を抜くところは抜いて踊るが、美しく映えて皆は息をのんでしまう。  フルコーラスで照明と映像の確認が終わると、次は帆乃だけの曲の投影確認が始まる。  ステージから退散しローブを脱いだ理玖は汗を拭き水を飲みながらステージに目をやる。  帆乃が真ん中に立つと、円筒のスクリーンが降りて帆乃は閉じ込められる形になる。そばにあった台本を理玖は見る。 (俺のソロダンスの間にスクリーンをスタンバイして”snow drop”になるんだっけ) 「わぁ……」  帆乃は思わず感嘆の声を上げた。  スクリーンに映る雪景色のような映像があまりにも美しかった。それを初めて見たスタッフたちも「おぉ」と声を上げた。 「で、これがオンライン上ではこう見えるのか」  映像チームの人が周りの演者たちを呼び寄せてモニターを見せた。 「涼しい映像だねぇ」 「納涼だわー」 「今の季節とかガン無視だけどいいわねぇ」  理玖もモニターを見る。帆乃が雪景色に閉じ込められ、それが哀しくも映った。当の帆乃は滅多にない体験で上を見たり下を見たりと落ち着かない様子だった。 「音出まーす」と音響の人が言うと、”snow drop”が流れ、それに合わせて映像と照明が変化する。 (……こんな大音量でこの曲聴くの、初めてだけど……嬉しいけど、やっぱ照れるな…)  理玖はにやけそうな口元を隠すように抑えた。

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