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真夏の逃亡 13

「実はね、ナノちゃんは今回のダンサーリーダーの依頼に乗り気じゃなかったの。だけど帆乃くんの歌声を聴いてから考え直してくれて、南里くんにもあれだけ厳しくしっかり指導してくれてね……帆乃くんの歌が、あの2人を繋いでくれたの」 「…俺の、歌が……」 「ナノちゃんも、南里くんも、私はまだまだ表現者として高みに行けると思ってた……特に南里くんはこんな場所で治まって欲しくなかった……こうして2人が踊って、私たちを深く感動させてくれたのは、ぜーんぶ帆乃くんの力よ」  思わぬ言葉で帆乃が驚くと、また音楽が鳴った。  『僕の声は』、ライブではダンサー9人が帆乃を囲んでステージを彩る。  午前中は帆乃もステージで歌っていたので気付かなかったが、美しいフォーメーションと振付、ダンサーの動きが一糸乱れずシンクロし、まるで芸術品だった。 「ナノハさん……理玖さん……」 (こんな凄いダンスを、俺の歌が繋いだ……?)  最後のフレーズはidだけ立ち、ダンサーはしゃがんでフレームアウトしていた。  映っていないのにダンサーたちはまだ演じている。その空気に帆乃は鳥肌が立つ。 「華笑さん、どうですか?」  帆乃が気が付いたときにはステージは終わり、ダンサーチームが華笑の元に集まっていた。  華笑から数歩引いて帆乃はキョロキョロと辺りを見渡す。崇一が忙しく動いていたが帆乃に気が付いて帆乃に駆け寄った。 「帆乃くん、体調は平気?」 「あ…だ、大丈夫です」 「そうか……あー…本当に最近はごめんね…色々と」  崇一は眉を下げた表情で帆乃の頭を撫でる。 「南里くんと会えないようにしちゃって……帆乃くんの気持ちも考えなしに」 「いいえ……それは俺の為だってこと、分かってます」 「それに……家にいて大丈夫? 何かされたりしてない?」 「はい…何もありません………は、母は、落ち着いてますし…父も帰ってなくて……兄も忙しいみたいで……俺も、そっと帰ってます、から……」  帆乃が苦く笑いながら答えるので崇一は辛くなり帆乃を守るように抱きしめた。 「帆乃くん、忘れないでね……君のことが大切で大好きって人の方が多いってことを」 「社長…」 「それだけは、忘れないでね」 「……はい」

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