152 / 175
真夏の逃亡 15
ステージから離れた場所にあった椅子に並んで座って、帆乃は妙に緊張する。
「あ、の……み、南里、さん」
「奏楽でいいよ」
「じゃあ……奏楽さん……あの、ありがとうございます」
帆乃は奏楽に頭を下げた。
「奏楽さんがスポンサーになってくれたから、今回ライブができるって…聞いたので」
奏楽は帆乃の頭を撫で微笑む。
「本当にいい子ね。ハナさんや一樹から聞いてた以上にね」
「一樹くん、ですか?」
帆乃がつぶやくと奏楽は困った様に笑う。
「ほら、私と理玖ってあんな感じだから理玖が自分のこと全然話してくれないし、両親も日本にいないから実家にも滅多に寄り付かないのよ。たまに来てもご飯食べてすーぐ帰るし。だから一樹に頼んであの子のことを逐一知らせて貰ってんの」
「そうだったんですか…」
「……帆乃くん、ひとつ訊いてもいいかしら?」
「はい」
帆乃は奏楽の顔を見る。
「君は、理玖が泣いたところ、見たことある?」
「え……っと……」
そう言われて振り返るが。
(ない)
「ないです……」
「そっか……」
奏楽は何故か寂しそうに笑う。少しだけ上をむいて懐かしむ表情になってポツリポツリと語りだした。
「ムカつくから、教えてあげる」
「え……?」
「そんな感じだと、理玖はあまり自分のことを君にも明かしてない気がしてね」
ともだちにシェアしよう!