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真夏の逃亡 16
「今回スポンサーしてんのも、私なりの罪滅ぼしかなーって」
「……でも奏楽さんは何も悪くないですよね…?」
帆乃は前のめりになってそう言うと奏楽はまた寂しく笑う。
「私だけじゃなくて両親がね……特に父は、南里を嫌って独立したはずなのに、南里財閥の子会社で収まってしまっているから……結果的に家や名前を完全には捨ててないの。そのせいで理玖が何度も傷ついた……」
奏楽の声が段々と震えはじめ、帆乃はそっと奏楽の頬に手を添えたとき。
「奏楽、帆乃くん、そろそろ締めるからこっちに来て」
華笑が2人を呼びにきた。しかし2人の只ならぬ状況に華笑は気まずそうにした。
「あらぁ…お取込み中?」
帆乃は手を引っ込めて顔を赤くする。
「そそそそそそそんなのないです!」
華笑は怪訝な表情で奏楽を見る。奏楽は先ほどまでの悲しそうな顔から一変し、余裕そうな笑顔を見せていた。
「ざーんねん♪ 帆乃くんすごく綺麗だからワンチャン奪ってやろっかなーと思ったのになー」
「はぁ…ったく、早く来なさい」
華笑は呆れながらそう言って集合している場所に歩き始め2人もそれについて行った。
リハーサルが終わり着替えを済ませた理玖と帆乃は駐車場にいた。
「マジで行くのかよ」
「もう明人くんがご飯作って待ってくれてるのよ、ねー?」
「うぐ…」
理玖は義兄・明人が作る料理が大好きなので、空腹の今、食欲に逆らうことはできなかった。
駐車場に停まっていた赤いベンツに奏楽と理玖は馴れたように乗る。帆乃がドアの前で戸惑っているのに気付いた理玖は一度降りて帆乃の手を取る。
「帆乃くん、おいで」
「はい…」
理玖は帆乃と一緒に後部座席に乗った。
「んじゃ出発するわよー」
奏楽はエンジンをかけて発進した。
今いる会場は小高い山の上にあったので都心に向かう車はぐんぐんと下っていく。段々と暗くなっていき灯りも少しずつ見え始めた。
帆乃はまだ緊張し固くなっている。車窓をずっと眺めていたら、隣から寝息が聞こえてきた。理玖が窓に頭を凭れさせ眠っている。
対向車のライトに照らされる理玖の寝顔を見ると帆乃の顔が熱くなる。
(理玖さん…他の人より出番も動きも多いから……疲れるのは当たり前だよね…)
指先でそっと理玖の唇の輪郭をなぞると、理玖の口がむずむず動き、すぐに引っ込めてしまう。
___ 理玖が泣いたとこ、見たことある?
(もっと…本音とか、我儘とか、甘えとか…見せて欲しいけど……俺じゃ、無理なのかな)
車は急ぐように右折して車内は揺れたが、理玖が起きる気配はなかった。
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