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真夏の逃亡 17
目を開けると、少しだけ門の装飾が変わった実家の外観が見えた。
「あれ……父さん……?」
さっきまで父の肩に凭れていたはずだと思い理玖は隣を見た。
「理玖さん?」
「あ…れ……帆乃、くん?」
隣にいたのは父でなく不思議そうに自分を見る帆乃で、理玖は自分が夢を見ていたのだとやっと理解した。
「あんた静かだと思ったら眠ってたの?」
「あ? 何、着いたの?」
「着いたわよ。車庫入れするから2人とも降りて」
奏楽にそう言われ理玖はドアを開けて降車する。帆乃も反対側から降りると車は発進した。
「ふあーぁ…ごめんねー、何か超疲れちゃっててさー」
理玖は大きく伸びをして目を覚まそうとする。帆乃は首を横に振って理玖に駆け寄る。
「今日は理玖さん一番大変でしたし、その……お疲れさまでした」
帆乃がそう労うと理玖は笑顔になり、帆乃の頭を優しく撫でた。
「先に入っちゃおう。義兄さんの料理早く食べたいし」
理玖は帆乃の手を取って門を開けた。
敷地に入るとよく手入れをされた庭があった。夜だが家の中からの明かりではっきり見える。英国風の造りでベンチ型のブランコなんかが置いてあった。
「義兄さん…忙しいのによく手入れしてんなぁ……」
「へ?」
「この庭ね、俺の母さんがガーデニングが趣味でこういう感じなんだけど、今は母さんここにいないから代わりに義兄さんがやってんだって」
「そうなんですね…」
理玖に説明されながら庭を見ていると後ろから奏楽がやってきた。
「なーにやってんの? 早く入りなさいよ」
「うっせー」
奏楽に急かされて3人は家の中に入っていった。
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