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真夏の逃亡 22

 「チュッチュッ」とリップ音を立て触れ合い、徐々に互いを求めるように深く口づける。 「ん…ふぅ……」  帆乃は覆いかぶさる理玖の腕にすがる。その帆乃の細い手を辿って指を絡めると、理玖は唇を離して帆乃を見つめる。 「……はぁ……ごめん…」 「へ…?」  理玖は眉を下げて謝ると、ゆっくりと帆乃を起こして自分の膝の上に乗せる。 「帆乃くんと久しぶりだからさ…エッチなこといっぱいしたかったけど……やっぱ実家じゃ無理だった」  気を落とした理玖は帆乃の肩に埋まって情けないため息をつく。  完全に落ち込んだ理玖を宥めるように帆乃は理玖の背中に手を回して優しく摩る。 「理玖さん…今日ずっと動いてたし、ゆっくり休んだ方がいいと思います」 「帆乃くん…ありがと」  理玖はそう言って帆乃の頬にキスをすると丁寧にベッドに横たえた。そして自分も直ぐに帆乃の横に寝っ転がると、帆乃に腕枕をして、2人は見つめ合った。 「今日は、理玖さんのこといっぱい知れた気がします」 「そっか……俺はあんま知られたくなかったけど…いつまでも隠し通せるわけでもないしね」 「お家のこと、ですか?」  理玖は頷くと、ゴロリと仰向けになって見慣れていた天井に目を向けた。帆乃はその横顔を見つめる。 「南里財閥……って知ってるか。橘さんが本社に内定してるって聞いたし…」 「………はい」  理玖が口にした橘 史哉の存在に、帆乃は少し堅くなり、理玖のシャツをギュッと掴む。  それに気が付いた理玖は、腕枕をしていない方の手で帆乃の手を包んだ。 「俺んチはそこの縁者で、父さんが子会社を、姉貴は父さんの会社の子会社を経営してて…って感じ。姉貴が南里に関連した場所で働いてくれているおかげで俺は自由にやらせてもらえている。絶対に跡取りになれ、とか…そういうことは両親も言ってこないし、てか建築関係(ゼネコン)で心理学の専攻なんて採用されるわけねぇし」 「……でも、どうして実家を出たんですか?」 「んー…と……特に理由もなかったけど……多少の息苦しさはあったよ。ま、自立するいい機会だってことで、学費と家賃の支援はしてもらうけど、それ以外は全部自分で働いて稼ぐってのを約束したんだ。その条件で今のアパートも決めたし……てかびっくりしたでしょ? こっちの部屋の方が広くて」  帆乃は初めて入った理玖の実家の自室、住んでいるアパートの2倍は広い。  今寝ているベッドはダブルサイズ、学習用の机、それとは別にデスクトップのパソコンとそれ用の机と椅子、大きな本棚が2つあり、そのうちの1つにはバレエで評価されたであろうメダルや盾やトロフィーが綺麗に飾られている。  これだけのものが配置されていながら広々としているのだ。 「不自由……とか…は?」 「全然、むしろアパートのが心地良いかな」  理玖は笑いながら帆乃の方を向くと、少し震え始めた帆乃を慰めるように何度もキスをする。 「あの部屋は、帆乃くんが帰ってきてくれる部屋だからね」 「理玖、さ…ん……」  帆乃は理玖の胸に顔を埋めて、安心したい為にギュッと抱きつき、理玖はそんな帆乃を包むように抱きしめた。

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