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真夏の逃亡 26

「帆乃! 行くなっ!」  理玖は玄関を飛び出し、手を伸ばす。 「帆乃! こっちに来い!」  差し伸べられた手を見て、帆乃は涙を流す。 「早く!」  帆乃は初めて(支配者)に抗った。  父に掴まれている手を振り切って、理玖の元へ走る。 「理玖さん!」  泣きながら必死に理玖の名前を叫んだ。  理玖は帆乃の手を掴んで、帆乃は理玖の手を掴んで、2人はその手を繋いで走り出す。  家の裏側にある勝手口用の門から家の敷地から出て、最寄りの地下鉄の駅へ急いだ。  「チッ」と橘 建史が舌打ちすると、秘書らしき1人の男が追いかけようとすると明人が立ちふさがりその足は止められた。 「今までの言動、彼、帆乃くんに対する恫喝の疑いがあります。少しお話を聞かせて下さい」  明人は警察手帳を見せた。そして奏楽はツカツカと前に出て、3人を睨むように見る。 「ここで執拗に追いかけるのであれば、私の家族への付きまとい行為として警察に被害届を出します。それとも…少年を恫喝した大人がいた、と通報しましょうか?」 「どういうことだ! あれは私の家の者だ! そちらこそ、急に子供を連れまわして…明らかに誘拐だろう!」  目を見開いて反論する橘に、明人は益々険しい顔をする。 「それと、帆乃くんの身体中にあるアザや傷について、何者かからの継続的暴行の疑いがあると、医師の診断書もありますわ。そちらについても警察に相談しようと考えてますが…」  奏楽の揺さぶりで橘は顔を青くし、「失礼っ!」と威圧的に捨て吐き車に乗り込んで、去って行った。  嵐が去り、冷静になったところで奏楽と明人は「はぁ…」と力を抜いた。 「明人くん……昨夜のアイツの頼み…やったるわ」 「そういうと思った。一緒に行くよ。色々心配だし」 「ありがとう………あ、あと一つ、やっとかなきゃ」  奏楽はそう言うと急いで家に入り、スマートフォンを手に取ってどこかへ電話する。相手は5コール後に出る。 「あい?」 「久しぶりね、カドマツくん」  聞き覚えのない名前に明人は首を傾げた。

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