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【2】『疲れさせないでくれ』
「何?」
「春日、少し休まないか?」
「疲れたか?」
「そうじゃない。お前ちゃんと寝てないだろう?目充血してるし何だか顔色も悪いよ。そうだ、俺が温めてやろうか?はは、名案だ。」
「暑苦しいだろうがよ。まったく。」
イベント前になると、忙しいのは当たり前だ。
二年生が主導で働いてはいるが、退任前の春日と兄崎も生徒会室で仕事をしていた。
エスカレーター式とはいえ高校進学の試験勉強もしなくてはならないため、連日寝不足気味だ。
「しかし、何だこりゃ。全然書類が減ってねぇな。二年は大丈夫なのか?」
「頑張ってはいるみたいだよ。慣れない仕事とプレッシャーでお疲れ気味だった。」
頑張るのは当たり前だ。
第一生徒会執行部のメンバーで、この時期顔色がよかった者がいたか?
と口にしようとし止めた。
馬鹿馬鹿しい。多忙なのは承知で役職に就き当然の役目を果たしているのだ。
嫌なら最初から生徒会執行部に入らなければ良い。
「倒れねぇ程度には頑張ってもらわねぇとな」
書類に視線を戻そうとしたとき、肩に鈍痛を感じた。
長時間俯き加減で小さな文字を見続けていたため、肩や首の筋肉が凝り固まっているのだ。
最近はパソコンのモニタを眺めている時間も長い。
それが影響してか眼球が乾いて痛い。
そう認識すると、倦怠感が強くなり全身が重くなる。
生徒会室には他の生徒は誰も居ない。
急に部屋が広く感じた。
隣にいた兄崎は立ち上がると、何故か春日の座る椅子の背もたれを掴み、カートを引くように冷蔵庫の前まで歩いていく。キャスターが床に滑る感覚が臀部に伝わる。
何がしたいんだ。
椅子に座ったまま、遠ざかる机の上に設置されたパソコン画面と書類を眺めながら春日は溜息をつく。
彼は以外に強引だ。
「頼むから俺を無駄に疲れさせんな」
背中から冷蔵庫のドアを閉める音がして、座ったままの春日の旋毛を覗くように兄崎は後ろから頤を掴む。首を仰け反り、覗き込む兄崎に不快感を隠せない。
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