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4-04-1 夏休みの学校(1)

夏休みも半ば。 今日は、雅樹と学校の図書室で一緒に勉強をすることになっている。 朝から、うきうきしている。 僕はシャワーを浴びながら、雅樹の顔を思い浮かべた。 あぁ、雅樹。僕の雅樹。 早く会いたいよぉ。 シャワーを終えて制服を着た。 ささっと支度を済ませると、すぐに玄関に向かう。 「めぐむ、お昼には帰ってきなさいよ」 お母さんの声。 「はーい。行ってきます!」 僕は家を出た。 夏の炎天下で直ぐに汗がでる。 「ふぅ、暑いなぁ。でも、気持ちいい!」 僕は、天に向かって両手を広げた。 真っ青な空に、真っ白な雲が浮かんでいる。 街の景色が濃い。 チェリー公園を通りかかった。 「シロ、いる?」 見回す。 でも、誰もいない。 「さすがに暑いもんね……」 僕は小走りで駅に向かった。 学校の図書室は、夏休みは解放している。 夏の追い込みで、自習机を使用したい受験生が多いからだ。 僕が図書室に入ると、先に来ていた雅樹が手を挙げた。 僕はアイコンタクトをとって、雅樹の隣の席に座った。 「おはよ、めぐむ」 「おはよう、雅樹」 小さい声で挨拶を交わす。 みんな集中しているから、私語は厳禁。 ヘッドフォンをしている人も多いけど、やはりマナーはまもらなきゃ。 雅樹は、ノートの隅に文字を書いた。 『汗すごいよ』 僕は、カバンからノートを取り出し空きページの隅に文字を書く。 『うん。走ってきたから』 雅樹は、カバンからタオルを取り出し手渡す。 雅樹は部活の名残で、いつもカバンに替えのタオルを入れる習慣があるみたいだ。 手渡されたタオルで汗を拭いた。 図書室は涼しくて、汗が冷えて逆に体が冷えやすい。 僕は『ありがと』と走り書きをして、雅樹に返した。 雅樹は、にこっとした。 そして、何を思ったか、僕の汗がしみこんだタオルの匂いを嗅ぎだす。 ちょっと! やめてよ。 僕は、慌てて雅樹の半袖のシャツを引っ張る。 雅樹は、満足気に匂いを嗅ぎながら、こちらを横目でチラチラ見ている。 雅樹は、僕が恥ずかしがるのを楽しんでいるのだ。 その手に乗るものか! 僕は、すぐに手を離し、なにも気にしない風を装い、カバンから勉強道具を取り出し広げた。 僕も成長したもんだ。 そして、勉強を始める。 横目で雅樹をみると、ちぇっという顔つき。 ふふふ。 雅樹も、しかたなく、勉強のつづきをし始めた。 何も話をしなくても、近くに雅樹がいる。 それだけで、変な迷いはなくなる。 不思議……。 勉強につまったら、雅樹の顔を見る。 真剣な眼差し。 うん。 雅樹が頑張っているから、僕も頑張れる。 そう、思って、また難問に取り掛かる。 元気をもらえる。 きっと、雅樹もそうやって、僕の顔を見ていうんだと思う。 一時間ぐらい勉強しただろうか。 だいぶ進められた気がする。 ふぅ。 僕は、すこし疲れて伸びをした。 雅樹は、それに気が付いたのか、ノートの端に文字を綴った。 『めぐむ、ちょっと見てくれよ』 ん? 確か、雅樹は数学を勉強中だったはず。 数学はちょっと苦手。 僕に教えてあげられるかな? 僕は不安げに雅樹を見る。 雅樹は、意外な行動をとった。 自分の股間を指さしたのだ。 あれ? 勉強を教えて欲しいんじゃないの? 僕は雅樹の股間を見た。 えっ。 嘘でしょ? 勃起しているのか、ズボンがものすごく盛り上がっている。 僕は急いで、ノートに書く。 『どうしてそんなことになっているの?』 雅樹は頭に手をやって、照れた顔をした。雅樹はペンを走らせる。 『実は、めぐむの汗の匂いを嗅いでからずっとなんだ』 ぶっ。 『それって、一時間ずっと? 勉強している間も?』 僕が書いている間にも、雅樹は返答を書き始める。 『うん。 だから、エッチしようよ』 僕は、あたりをキョロキョロする。 そして、怒った顔つきで雅樹を睨んだ。 雅樹は、ごめんよ、だって、としょぼくれた表情をした。 僕は溜息をついた。 でも、雅樹ばかりを責められない。 僕も雅樹の勃起したペニスを想像すると、勉強どころではなくなっちゃうんだ。 エッチモードに切り替わってしまう。 あー、もう。 しようがないな。 『ちょっと、図書室を出よう』 僕はノートの隅に書いて、席を立った。 中庭の花壇前のベンチ。 僕は、雅樹に言った。 「もう、雅樹。学校で、エッチできるわけないでしょ?」 「でも、やばいよ。これ。勉強に身が入らないんだよ」 雅樹は、股間を突き出してアピールする。 「わかった、わかったから、やめてよ。もう」 僕は慌てて、雅樹の股間を隠すように手を出す。 「ははは。でも、確かに夏休みとは言え、どこも部活で使っているよな。体育倉庫とか」 僕と雅樹は、学校では何回かエッチはしたことはある。 でも、それはいいタイミングがあってのことだ。 僕は、ふといいことを思いついた。 「ねぇ、雅樹」 「ん? なんだ、めぐむ」 「もしかして、保健室って空いているかも。今日」 「まじか?」 「たしか、山城先生は夏休みとるっていっていたから」 「ほう。それは絶好のタイミングだな」 「でも、鍵が開いているかどうかわからない」 「まぁ、いってみようぜ! めぐむ」 「うん」 僕と雅樹は、保健室に向かって歩き出した。 「めぐむ、それにしても、どうして山城先生が夏休みを取るって知っているんだ?」 「えっ? そっ、それは……」 そうなんだ、この間のフェラの練習の時に少し話をして聞いたのだ。 練習のことは雅樹には内緒。 僕は平静を装って答える。 「なんか、夏休み前に説明あったんだ。担任の先生から」 「うちのクラスはそんな話あったかな……」 「ほら、部活動で夏休み中はケガに注意しろって。山城先生が不在の時があるからって」 「うーん。たしかにあったような、なかったような……」 「まぁ、いいじゃん。雅樹のクラスの担任の先生は忘れたんだよ、うん。ほら、もう保健室に着くよ」 「おう」 保健室の前にやってきた。 僕は、保健室の電気がついているのに気が付いた。 「あれ、電気ついているね。誰かいるのかな? 扉も空いているみたい」 僕はそっと、扉を引く。 顔だけをそっと中に入れると、やはり誰かがいるようだ。 ベットを取り囲むカーテンが閉められている。 誰かが寝ているのかもしれない。 「雅樹、誰かいるみたい。残念……」 「そっか、しかたないな」 その時、カーテンの方から声がした。 「だれだ? 誰かいるのか!?」 僕達は、慌てて中に入り物陰に隠れた。 (どうして、隠れるんだ? めぐむ) (雅樹こそ) カーテンから、背の高い男性が出てくると、扉までやってきた。 僕と雅樹は息をひそめて、成り行きを見守る。 「先生、どうしたの?」 カーテンの中から、別の声。 「鍵をかけそびれたみたいだ。大丈夫。外の音みたいだ」 「よかった……」 背の高い男性は、外をキョロキョロ見回し、扉の鍵をガチャリと閉めた。 僕は、大声を出しそうになっていた。 でも、雅樹の大きな手が口を塞いでくれたおかげでなんとかなった。 なぜ、大声を出すところだったかというと……。 その男性と、カーテンの方から聞こえた声の主を知っているからだ。 そう。 その背の高い男性は、片桐先生。 そして、カーテンの奥から聞こえた声は、ジュンの声。 片桐先生とジュンのあいびきの現場に、居合わせてしまったのだ。 僕と雅樹はそっと、ベッドが見える位置に移動した。 やっぱりだ。 ベットに寝そべるジュンと、傍らに立つ片桐先生。 (雅樹、まずいよ。こっそり、出ない?) (といって、鍵を開ける音でバレるだろ?) (たしかに……) (こうなったら、二人が出ていくまで隠れているしかないだろ) (なんか覗き見たいで嫌だけど……しようがないよね) ジュンには悪いと思う。 でも、片桐先生とジュンの関係がどうなっているのか、興味がないわけではない。 だから、ちょっと覗かせてね。 ごめんね、ジュン。

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