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4-10-2 温泉宿へ(2)

「お先!」 雅樹は、服を散らかして、湯舟に飛び込む。 「もう! 脱ぎ散らかして!」 僕は、文句を言いながらも、雅樹の服を拾って畳んであげる。 自分も服を脱いだ。 あーあ。 せっかく、黒いレースの下着の感想を楽しみにしていたのに……。 「まってよ!」 僕も全裸になると急いで浴場に向かった。 湯舟に浸かった。 僕は、思わず叫んだ。 「はぁ……。温泉、気持ちいい!」 「あぁ、そうだな。やっぱり、温泉はいいなぁ。めぐむ、こっちへこいよ」 「うん!」 僕は、差し出されて雅樹の手をとり、雅樹の胸に寄りかかった。 雅樹は、庭の木を眺めながらつぶやく。 「なんか、京都の旅館と似ているな。こうやって庭の木々を見たよな……」 「うん。あの時は、ちょっと焦ったよね。ふふふ。手を繋いでいたら、翔馬とジュンが入ってきて」 「そうそう。あれは、ばれなくて良かったな。ははは」 あの時は、4人一緒だったからドキドキしたっけ……。 でも、今は二人っきり。 僕は雅樹の体を指でなぞりながら、ゆっくりと顔を近づける。 雅樹も僕を見つめて、近づいてくる。 やさしい表情。 唇が重なる。 ちゅっぱ……。 あぁ、しあわせ……。 んっ、んー……ぷはっ。 僕は、唇で雅樹の唇をもてあそぶ。 ちゅっ、ちゅっ。 キスしながら、僕はささやく。 「ねぇ、雅樹、お願いがあるんだけど……」 「なに?」 ちゅっ、ちゅっ。 「ここで、エッチしない?」 ちゅっ、ちゅっ。 「ここって、露天風呂で?」 「そう」 ちゅっ、ちゅっ。 「いいけど。でも……」 「でも?」 雅樹は、にやりとする。 「新妻っぽく、言ってくれない?」 「えっ、その設定まだやるの?」 「今日は、いいじゃん。夫婦ごっこ」 甘えるような声。 ぷっ。かわいい。 なんだ、雅樹がしたいのか。 しようがないなぁ。 オホン。 「ねぇ、あなた。あたしを抱いて!」 「いいぜ、今日は思う存分、可愛がってやるからな!」 「はい……」 雅樹は、僕をきつく抱きしめる。 さばっ! お湯のしぶきが上がる。 抱き着かれて、すごく苦しい。 けど、ぜんぜん嫌じゃない。 雅樹は、僕を少し離すと、湯舟の隅を指差しながら言った。 「めぐむ、そこに座って」 キスを続けながら、僕は湯舟の角の縁に座らされる。 足を広げさせられ、ペニスもアナルも丸見え。 恥ずかしい……。 あぁ、雅樹の固いのがまた僕の中に入ってくるんだ。 憧れていた露天風呂でエッチ。 あぁ、興奮する……。 そこへ突然、雅樹が言った。 「あれ、めぐむ。ちょっと太った?」 えっ!? 僕は一瞬、目の前が真っ白になった。 太った? 太った? 太った? 耳の中でこだまする。 はっと我に返る。 「ちょっと、太ったってどこが? お腹出てないけど!」 雅樹は、顎に手を当てて、うーん、と唸っている。 雅樹の舐めるような目つきに、恥ずかしくなって、両腕をクロスして体を隠した。 「いや、なんというか。丸くなったのかな。上半身とか下半身とか。まんべんなくかな?」 「えっ、そんなぁ。ショック」 「気にするなよ、めぐむ。もともとやせすぎだったというのもあるしな」 「はぁ、立ち直れない……」 僕は湯舟に浸かり、お湯をブクブクさせた。 雅樹も、湯舟にちゃぷっと浸かり、僕の頭をポンポンと撫でた。 「ははは。そんなショックだったか。ごめんな」 「ううん。いいの。正直にいってもらったほうが。やっぱり、受験勉強で運動不足だったのかな……」 「そうかもな。ところで、エッチは?」 「ごめん、なんかそれどころじゃなくなっちゃった……」 雅樹は、ニコッと笑った。 元気出せよ、という慰めの笑い。 「そっか。じゃあ、そろそろ上がろう」 「うん」 お風呂を上がり部屋に戻った。 タンスから浴衣を取り出す。 ジュニアサイズが置かれていたのが、なんか悔しい。 なんだ、予約の時からなんじゃん。もう! 雅樹は、僕の着替えをじっと見ていた。 「どうしたの?」 僕は雅樹に問いかけた。 「いや、その下着。黒とか……エッチだな」 「あっ、そうそう。いいでしょ? これ」 やっぱり、気が付いてくれた! さすが、雅樹。 僕は、嬉しくなって、浴衣を捲って、下着を見せびらかすようにくるっと回った。 黒の上下セットだから、大人っぽい。 何はともあれ、ちょっとエッチなのだ。 ショーツは、布の部分が小さめのレース生地。 僕のサイズでも前の部分が少しモコっと膨らむし、何より透けるので形がよくわかるのだ。 だから、男の子の部分も同時にアピールできる一石二鳥の代物。 ふふふ。 「すごく、いいよ! かわいい。すごく、かわいい!」 「へへん。今日のために、衝動買いしたんだ。ふふふ」 雅樹は、へぇ、と半分口を開けて、僕の股間をじっと見つめる。 よし、よし! 見てる見てる! 僕は、腰を突きだし、さらに膨らみをアピールする。 雅樹は、さっそく触ろうと手を伸ばしてきた。 僕は、その手をじらすように掴んで抑える。 そして、いじるな口調で言った。 「あれ、雅樹。そこ盛り上がっているんだけど……もしかして勃起しちゃった? ふふふ」 「ばっ、ばれたか……めぐむの下着姿見たら、興奮してきちゃったよ」 「もう、エッチ!」 「いや、そうさせたじゃん。めぐむが……」 雅樹は、口をとがらせる。 僕は、笑いながら言った。 「お口でしてあげよっか?」 「おう! たのむよ!」 僕は、はっといいことを思いついた。 「じゃあ、雅樹。奥さんに言うようにお願いしてみて」 「えっ? あぁ、幼な妻ね」 「ふふふ。そうそう」 雅樹は、わざとらしく、オホンと咳払い。 「ねぇ、めぐちゃん。お兄ちゃんおっきしたオチンチンをその可愛いお口でしゃぶってね。絶対、美味しいから!」 ぶっ! 「あはは。雅樹、それ、幼な妻じゃなくて、幼女じゃないの?」 「ははは。ばれた? なんか、めぐむを見てたら、こっちの方があってるかなぁって」 「もう!」 僕は、雅樹の胸に飛び込み、ポンポンと怒ったふりして叩く。 「あはは。ごめん、ごめん」 「もう、雅樹はロリコンなんだから!」 「違う違う。誰でもいいってわけじゃないさ。めぐむだからさ……」 「……もう」 僕は、なんだか恥ずかしくなって、話を逸らすように言った。 「もう! いいから……さぁ、そこに寝て!」 「ああ」 僕は、寝そべる雅樹の浴衣をはいでいく。 そして、パンツの上からペニスに手を添え、雅樹の体を舐め始める。 パンツの前の部分は、はちきれんばかりに盛り上がっている。 いまにも飛び出しそう。 ふふふ。 きっと、たくさんでちゃうんだろうな……。 僕はそんなことを考えながら、雅樹の胸のあたりに舌を這わす。 そして、パンツをずり下げた。 ピンっと、現れるペニス。 ああ……おっきい……。 ペニス君、気持ちよくさせてあげるからね。 僕は、股間に向けて舌を這わしていく。 あれ? その時、何か違和感に気が付いた。 そして、思わずつぶやいた。 「ねぇ、雅樹。雅樹も太った?」 沈黙。 雅樹は、ガバッと起き上がり叫んだ。 「うっ、うそだろ? そんなわけないよな?」 「ううん。ほら、お腹とから腰の横とか、こんなにつまめなかったよね。前は……」 僕は、雅樹の腰の横のお肉をつまんでみせる。 ぷにぷに、と軽々とつまめる。 「えっ? まじか?」 「それに、胸もそうだし、肩とか、あと、さっき思ったのは背中。一回り大きくなった感じ」 「うそだろ? うそだろ?」 雅樹のペニスは、みるみるうちに萎えていく。 ついには、しょぼん、とこうべを垂れた。 「お風呂場に体重計あったよな? ちょっと乗ってくる」 雅樹は、だいぶうろたえている。 あたふたと、お風呂場へ駆け込んでいった。 しばらくして、お風呂場から声が聞こえてきた。 「やばい! 体重増えてるー!」 クスッ。 おかしい。 なんだ、僕と同じじゃないか。 雅樹は、肩を落とし、しょんぼりして戻ってきた。 そして、ドスンと座り込む。 僕は、ポンっと肩に手を置いた。 「元気だして、雅樹。受験勉強で運動不足なんだよ。きっと」 「あー。このままデブになっちゃうのかな……」 「きっと、食べる量をすこし減らして、すこし運動するれば大丈夫じゃない? 雅樹はもともと筋肉あるから代謝いいはずだし」 「そっか、そうだな。よし、二人でダイエットしような」 「うん。そうしよう!」 なんだろう。 このガッチリと握った握手。 ふふふ。 おっかしい! とはいえ、ちょっと重い空気になってしまった。 せっかく、ウキウキ気分だったのに……。 それを払しょくするように、雅樹が言った。 「おっと、そうだ! めぐむ。これ」 そう言うと、雅樹はカバンから小さな包みを取り出す。 「えっ、なに?」 「なに? って誕生日のお祝いだよ」 「あーっ。そうか。すっかり忘れていた。温泉のことで頭がいっぱいだった」 「誕生日おめでとう! めぐむ。開けてみて」 「うん」 僕は、袋を丁寧に開けた。 そこには、小さいポーチが入っていた。 小さな猫のキャラクターが描かれている。 「かわいい! ありがとう、雅樹」 「へへへ。気に入ってくれた? ほら、めぐむ、化粧道具とか入れるの、なんか困っていそうだったから」 雅樹はよく見ていてくれている。 そうなんだ。 なかなか、小物まで手が回らないのが実情。 100均の小物入れで誤魔化して使っている。 「うれしい。ほんとにうれしい。うん。さっそく、いれかえよっと!」 ワクワク。 僕はカバンから、メイクセットを取り出し入れ替えをする。 そして、実際のメイクをイメージして出し入れを試してみる。 「わぁ、いい感じ。大切に使うね。雅樹」 雅樹は照れた顔で頭を掻いている。 「なんか、そんな喜んでもらえるなんて予想外で驚いているよ……」 僕はポーチを胸に押し当てた。 きっと、これからメイクをするたびに雅樹の顔が思い浮かぶんだ。 ありがとう、雅樹。 それに、よかった。 ほら、いつの間にか、また元の楽しい空気に戻ってる。ふふふ。 そこへ部屋の内線電話が鳴った。 昼食を知らせる連絡だ。 「さぁ、めぐむ。お昼ご飯くるって!」 「やった! 待ってました!」 今日のプランは、懐石料理を部屋食でいただけるのだ。 お料理は、パンプレットで見た感じだと、結構豪華版。 いやが応にもテンションが上がってくる。 僕達は、お互いの顔を見合わせて、ペロリと舌なめずりをした。

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