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4-12-2 同好会活動!(2)
そんな訳で、僕は保健室にやってきた。
僕が保健室に入ると、山城先生は、あれ? という顔をした。
「山城先生、お話があるのですが」
「ん? 青山か。あれの日は、まだだったよな?」
「はい。あれの日は、まだです。今日はちょっと聞きたい事があって」
あれの日とは、そう。フェラの練習の日。
前もって約束してあるのだ。
「そうか。まぁ、そこに掛けなさい」
山城先生は、丸椅子を勧める。
「はい」
僕が座る間に、先生はコポコポと電気ポットのお湯でお茶を淹れてくれる。
湯気が立ち込める。
「ほら、お茶だ」
「ありがとうございます」
僕は、フーフー言ってお茶をすする。
美味しい。
山城先生は、くつろいで椅子にもたれた。
リラックスした雰囲気。
山城先生の目には、僕ってどう映っているんだろう?
可愛い教え子。
しつこくフェラを迫る男子学生。
恋人が目にかけている歳下の男の子。
守るべき弟のような存在。
そのどれでもない、のかも……。
僕は、山城先生がジッと見つめていたのに気付いた。
「で、話ってなんだ? 青山」
はっとした。
僕も、すっかりくつろいでいたようだ。
クスッ。
ただのいいお茶飲み仲間、なのかも。
僕は、話し始める。
「えっと、1年生の松田君の事なんですが」
「うっ、うむ」
山城先生は、あからさまに嫌な顔をした。
「で、松田がどうかしたか?」
「はい。僕の所に相談に来まして……」
「青山の所に? 何か言っていたか?」
「はい。山城先生の弟子になったって」
「あぁ、まあな。最初は断ったけどな。なんかうやむやの内にそうなったっぽい」
なるほど。
松田君が強引に押し切ったようだ。
「山城先生。松田君の事、お嫌いですか?」
「いや、嫌いとか好きとかじゃなくてさ……」
山城先生は、腕組みをして困った顔をした。
「松田は、俺になんて言ったか知っているか?」
「はい。『付き合ってください』ですよね?」
「そう! それ! そんなの無理な話だろ?」
山城先生は、やれやれ、というように両手広げて見せる。
「ですが、ちょっと目をかけてあげるぐらいなら、いいと思うのですが……」
僕が言うのは、筋違いな事は百も承知。
でも、言わざるを得ない。
松田君は、決して悪い子じゃない。
山城先生を慕って、愛しているのだ。
ただ、見た目の怖さや表現の仕方が不器用なだけ。
山城先生は、僕の事をチラッと見て、そんな事は分かっている、と言わんばかりに言った。
「うむ。だから、褒美をやったんだが」
「えっ? ご褒美をあげたんですか?」
あれ? 松田君の話と違う。
「ああ。まぁ、柔道部に入って、戦力の底上げをしっかりやってもらったからな」
「でも、松田君、褒美をくれないって……」
おかしい。
この話が本当なら、どうして松田君は、あんな事を言ったのだろう?
山城先生は、言った。
「松田は、欲張りなんだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。うん」
つまり、先生のご褒美に満足してないって事か……。
そもそも、ご褒美が何なのか気になる。
「山城先生、差し支えなければ、ご褒美に何を上げたか教えてもらって良いですか?」
「キスだが。あれ? 松田から聞いていない?」
へっ!
聞き違い?
いや、確かにキスって……。
「先生! もう一度」
「キスだな」
「えーっ! キス? 本当ですか?」
「ああ、本当だ。しかも、松田は、激しく吸い付いてくるから、びっくりしたぜ」
さすがの山城先生も恥ずかしそうな表情をした。
「ええっ! すっ、すごい」
山城先生と松田君のキスって……。
モヤモヤが僕を包見込む……。
「松田、よく頑張ったな!」
山城先生は、松田君の額に優しくチュッとキスをする。
松田君は、頬を赤らめて言う。
「先生、俺、もう我慢できないっす!」
「おい、待てって。あっ」
んっ、んっ、んっ、ぷはっ。
松田君は、自分の唇を先生の唇に押し当てると、嫌がる先生の唇を舌でこじあけ激しく吸い付く。
はぁ、はぁ……。
二人の息遣いが熱を帯びる。
ちゅぱ、ちゅぱ……。
キスを続けるに従い、始めは嫌がっていた山城先生もだんだん心を開いていく。
激しく、舌が絡み合い、弾き合う。
「可愛いやつ……抱いて欲しいか?」
山城先生の手がスッと松田君の胸元に忍び寄る。
「せっ、先生! あっ、あーっ」
「ところで、青山はどうして顔を赤らめているんだ?」
「えっ? 僕? 僕もキスするの?」
「おいおい、しっかりしろ、青山!」
はっ!
やばい。
つい、妄想をしてしまった。
はぁ、はぁ。
一体、どんな激しいキスだったのだろう……。
僕は、山城先生の唇を覗き見る。
あの唇が松田君のと……。
「で、松田は、キスじゃ足りないって言ってしつこいんだよ。なぁ、青山。逆に、松田に諦めるように言ってくれないか? 頼む」
山城先生は、ほとほと困った、という顔をした。
「へっ? これじゃ、何だが逆だよ……」
僕は、天井を仰ぎ見た。
次の日。
早速、松田君は僕の所へやってきた。
クラスメイトのささやき声が聞こえる。
「なんか、1年生の例の子、よく来るわね」
「もしかして、青山君の事が好きなんじゃない?」
「ほら、青山君って私達の目から見ても可愛いし」
「実は、もう付き合っていたりして」
「そうそう。それで、もう深い仲でさ」
「うっそ! でも、あるかも! キャー」
ふぅ。
やっぱり、1年生ってだけで目立つのに、あの巨漢の松田君だもんな。
誤解されてしまうのも分かる。
次からは、直接教室に来るのは控えさせよう。
「会長、どうでした? 山城先生は、何か言ってました?」
僕は、松田君を中庭まで連れていくと真っ直ぐ向き合った。
「ねぇ、松田君。山城先生に聞いたけど、キスしたんだって?」
「はい」
松田君は、普通の事の様にサラッと答えた。
「そんな事、一言も言わなかったじゃん! キスしてもらったんだったら、いいでしょ?」
「いや、でも……それじゃ満足できないっす」
「満足できないって……何だったら満足するの?」
なるほど。
これは、先生が言うのも分かる。
松田君は、欲張り過ぎだ。
キスで十分だと思うのに。
僕が雅樹とキスするのだってそんな直ぐじゃ無かったんだからね!
って、僕の事はどうでもいい。
松田君は、ちょっと間を置いて答えた。
「えっと、恥ずかしながら、山城先生の一物をしゃぶりたいっす!」
「ぶっ! どうして……」
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