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4-22-3 グランドフィナーレ!(3)
僕と雅樹が着替えを済ませて、スタッフさん達の前に登場すると、歓喜の声があがった。
「よし! 行ける!」
そんな声が耳に入った。
僕の衣装は、黄色のAラインのカラードレス。
小さい花柄が散りばめられていて、とっても可愛い。
ヘアアレンジも、さすがプロの仕事。
生花を使ったハーフアップのアレンジで、ドレスとのバランスも申し分ない。
僕にドレスを着つけてくれたスタッフさんは、僕の全身を改めて確認し、うんうん、と満足気にうなずいた。
一方、雅樹は白いタキシード。
全身を白で統一されたスタイルで、ただでさえカッコいい雅樹が、さらにカッコよさ倍増。
髪型もしっかりと整えられていて、清潔感が溢れ出る。
僕は、目を離すことができず、胸のときめきを抑えられそうもない。
それで、女性スタッフさん達の視線を一手に引き受けているのだ。
僕と雅樹は、互いに顔を見て、「恥ずかしいね」と素直に照れ笑いをした。
翔馬とジュンは、いち早く僕達のところにやってきた。
そして、翔馬とジュンは僕の姿に驚きを隠せずにいる。
そうなのだ、二人とも僕の女装姿を見るのは初めて。
正確には翔馬は、ギャルメイクの僕は見ているのだけれど……。
「雅樹はいいとして、めぐむすごいな、そのドレス姿! すごい綺麗だ。もはや男とは思えないぞ!」
翔馬の賛辞に僕は照れ笑いで返す。
「うんうん。めぐむ、キレイ……。めぐむって、やっぱり女装似合うなぁ。ボクが思った通りだ。ボクもめぐむみたいに可愛くなりたいなぁ。正直憧れるよ」
ジュンは、頬を紅潮させて目を輝かせる。
小さい女の子が憧れのお姫様に向けるような眼差し。
これにはさすがに僕は恥ずかしすぎて、穴が有ったら入りたい気持ちになった。
さて、撮影の方は、まずは室内風景ということで、ホテル内をめぐりながらのツーショット撮影となった。
まずは、玄関ホールでお出迎えのシーン。
雅樹は礼儀正しくお辞儀をすると、僕の手の甲に優しくキス。
そのまま、雅樹に手を引かれ、ホールから伸びたらせん階段を駆け上がっていく。
2階の手すりに寄りかかり、体をピッタリと合わせて見つめ合う。
それからは、赤い絨毯が引かれた廊下をお姫様抱っこで移動。
調度品が飾られたゴシック調の部屋に入り、ソファでひと休み。
そして、ひたいを付けて微笑み合う二人。
仲良く手を繋いで立ち上がると、少しはしゃぎすぎなダンスシーン。
そのままピアノの前に座り込み、ジャレ合う甘いひと時。
いつしか、まじめ顔になった雅樹に覆いかぶされ、キスされる寸前でクスクス笑い。
撮影と言っても全然堅苦しくない。
簡単な指示のもと、雅樹といつものようにイチャイチャしていれば、プロのカメラマンがいい感じでフィルムに収めてくれるのだ。
自然な僕達のままでいい。
撮影だからって気負う必要はまったくない。
だから、楽しい。
すごく楽しい。
しかも、いつになくカッコいいタキシード姿の雅樹と一緒。
テンションが勝手に上がってしまうし、カメラマンの「いいよ! いいよ!」という誉め言葉に、ついいい気分になって我を忘れてしまうのだ。
あっという間だった。
望月さんの「お疲れさまでした!」という言葉を聞いて、ああ、もうおしまい? と思ったほど。
僕達二人は、望月さんに引きつられて控室に通された。
「では、次の準備がありますので、しばらくこの部屋でおくつろぎください」
僕は、望月さんが部屋から出ていくのを確認すると、ソファにもたれるように座った。
「はぁ、楽しかった!」
「ああ、本当に、楽しいな!」
雅樹もソファに腰かけた。
自然と手を伸ばして繋ぐ。
「それにしても、めぐむ。本当に可愛いよ」
雅樹はそう言って、満足気に、うんうん、とうなづく。
「ありがとう、ちょっと照れる……」
今日、何度も聞いているセリフだけど、雅樹からだと何度でも嬉しい。
「やっぱりいいな。めぐむの女装……」
雅樹は、しみじみと言った。
そうなのだ。
一緒に暮らし始めると意外と女装をする機会がない。
だから、久しぶりの女装なのだ。
高校生の頃とは違い、今では家ですぐに着替えられるのに可笑しなものだ。
でも、こうやって女装すると雅樹の反応がいつもと違うからとっても新鮮。
「そうだよね。最近あまりしてないもんね。家でもたまにはしようかな、女装」
僕がそう言うと、雅樹はすぐに身を乗り出す。
「おお、いいね。裸エプロンとか?」
「ぶっ、それ女装じゃないから!」
「ははは」
「あはは」
僕達は大笑いをした。
しばらく何気ない会話をしていると雅樹が突然言った。
「めぐむ、やばい勃って来ちゃったよ……」
僕は、驚いて聞き返す。
「え? 今朝エッチして来たばかりでしょ?」
というのも……。
実は、毎朝のおはようのキスの後、そのままの流れでエッチをしちゃう事もしばしば。
今日は、久しぶりに美映留に帰れるとのことで、雅樹は興奮気味な体を持て余していて、僕はそのまま襲われてしまったのだ。
僕は、「もう、雅樹はエッチなんだから!」と言うのだけど、雅樹に言わせれば僕が可愛いのがいけないらしい。
まったく、人のせいにして、と思うのだけれど嬉しくないわけがない。
こんな話、翔馬とジュンに知られたら、また大笑いされてしまうだろう。
僕が雅樹を睨みつけていると、雅樹は申し訳なさそうな表情で口を尖らせた。
「だってよぉ……」
僕は腰に手を当て、ふぅとため息をつく。
「しようがないな、フェラしてあげるよ」
「本当か!? やったあ!」
雅樹は、ガッツポーズをした。
結局、僕は雅樹に甘いのだ。
雅樹が無邪気に喜ぶ顔を想像すると抗えない。
はぁ、僕ってどれだけ雅樹に首ったけなんだろ……。
「やばい、ドレス姿でフェラってエロい……はぁ、はぁ」
「ハムハム ……何言っているの! 自分で要求したくせに、ペチャペチャ」
僕は、タキシードのズボンのチャックから顔を出した元気いっぱいのペニスを、ヨダレいっぱいで舐める。
雅樹は、はぁ、はぁ、と湿った息を吐きながら僕の口に出入りする様子を興奮して見つめる。
そんな目で見られると僕までエッチな気分になっちゃうよ……。
ペニスだって、いつもよりおっきいじゃん。こんなにも固いし……。
僕は、一旦口から離すと、唇を突き出して先端部分に、チュッとキスをした。
「ねぇ、ペニス君。今日の僕の姿に興奮してこんなになったの?」
雅樹のペニスは、ピクンと反応する。
「クスッ。素直でよろしい!」
僕は、ご褒美とばかりに、先っちょを両手で包み込み、手のひらで擦るように滑らせる。
「めぐむ……やばい……気持ちいい」
再び、ハムッと咥え込むと、雅樹の柔らかいところを丁寧に揉み上げる。
よし、今日は思いっきりサービスしてあげよう!
僕は、上下運動を徐々に早くしながら、口の中でおしっこの出口あたりをレロレロと舐めた。
同時に竿の部分をシュッシュとしごき始める。
ビクビクっとした痙攣。
あれ?
早くない?
もしかして、もう出ちゃう?
雅樹の顔を見上げると、息絶え絶えになった雅樹のエッチな顔。
「めぐむ! いくっ!」
えっ、まだ準備が……。
うっ、っと雅樹の絶頂の断末魔と共に、ペニスの先から洪水のように僕の口に精子が注がれた。
僕は、慌てて口で塞ぐ。
口いっぱいになった精液。
こんなにいっぱい……。
僕は口を拭うと、ホッと息とついた。
危なくドレスを汚す所だった。
雅樹は、バタっとソファに倒れ込み、息を、はぁ、はぁ、と荒くして快感に酔いしれている。
「雅樹、出し過ぎ!」
僕は、ソファに横になる雅樹に覆い被さり、ほっぺをツンツンと突いた。
雅樹は、苦笑いして言った。
「しょうがないだろ? 花嫁にフェラしてもらうとか、エロ過ぎなんだからさ。って、めぐむは花婿か」
「ふふふ、花婿にフェラさせるなんて! エッチ!」
僕達は大笑いする。
「ははは。ところで、めぐむ」
「何?」
僕は、雅樹から離れ身なりを整えながら答えた。
「何で俺のペニスにさ、『ペニス君』て話しかけるの?」
「へっ!?」
僕は、思わず声を上げた。
雅樹の顔を凝視する。
雅樹は、平然と言った。
「だからさ、めぐむってフェラの時、そう独り言言っているよね」
「ちょ、ちょっと! それ、知っていたの?」
「ああ、ずっと前からな」
「ヒェ、はっ、恥ずかしいなぁ!」
体中が、火の玉のようにカーッと熱くなる。
僕は、とっさに両手で顔を抑えた。
まさか、雅樹にペニス君との会話を聞かれていたなんて!
僕は、雅樹に恐る恐る尋ねた。
「雅樹、いつから?」
「えっと、付き合ってすぐかな……」
ガーン!
それって、最初から全部聞いていたって事じゃん!
体中から汗が吹き出す。
はぁ、はぁ、やばい。
空気が薄い……酸素、酸素……。
「どっ、どうして、言ってくれないの! 恥ずかしいじゃん!」
「ははは。でもさ、なんか、めぐむ、すごい優しい顔するんだよ。それが、すごくよくってさぁ。そうこうしているうちに、言い出しづらくなっちゃって……」
だめだ。
恥ずかしいのを通り越して、今度は頭がクラクラしてきた。
貧血を起こしそう……。
僕は、深呼吸をした。
そして、息を整える。
「ふぅ。ねぇ、雅樹……」
「ん?」
雅樹は、僕の顔が赤くなったり青くなったりするのが不思議なようだ。
大袈裟だな、と言わんばかりに頬をポリポリかいた。
確かに恥ずかしい。
でも、考えてみればペニス君だって雅樹なんだ。
恥ずかしい事なんて、これっぽっちもない。
そうなんだけど……。
ふぅ、
まったくもう!
僕は、腰に手を当てて威張るように言った。
「これからも僕は雅樹のペニスを『ペニス君』って呼ぶけどいいよね!」
「そりゃ、構わないけど……」
「じゃあ、言わなかった事、許してあげる!」
「あはは。そっか、ありがとな。めぐむ」
「うん!」
僕が満足気にうなずいた所で、控室の扉をたたく音がした。
きっと、望月さんだ。
僕は、雅樹の手を取ってソファから引き起こした。
「ちょうど、撮影だね。いこう雅樹!」
「おう。あっ、しまった。チャック開けっぱなしだった。ははは」
雅樹は、慌ててペニス君をズボンの中に仕舞い込むと、ファスナーをキュッと引き上げた。
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