12 / 142
scene02-03 ★
「ちょ……えっ? 待てってばっ!?」
帰宅するなり、大樹は誠のことを自室のベッドに押し倒した。靴を揃えろだの、手洗いうがいをしろだの、口やかましく言ういつもの姿はない。
「待てない。いつまで待ったと思ってる。もう限界だ――男ならわかるだろ?」
「え、えっと……おあずけされてる犬の気分? な~んちゃって……ハハ」
「……バーカ」
可愛らしい表現に思わず笑うも、的確だと思った。こちらは大分待たされてすっかり焦れていたのだ。
(まったく、どっちが主人なんだか)
飼い馴らされているのはこちらかもしれない――だなんて考えながら、誘うように誠の唇を舌先でちょんと突いた。
つぶらな瞳が揺れて、やがて観念したように瞼が閉ざされる。愛おしい気持ちが込み上げてきて、優しく唇を奪ってやった。
まだ緊張している様子の唇を啄むように愛でていくと、次第に力が抜けて柔らかくなっていく。感触を縫って舌を捻じ込めば、誠はおずおずと舌を差し出してきて、いじらしく絡めてくるのだった。
「ん、んっ……」
縋りつくように、誠の腕が首に回される。
薄く目を開けたら、普段の様子からは考えられないような恍惚とした顔があった。その表情、熱、吐息、匂い……何もかもが情欲をそそった。
なぶるように唇の感触を味わいながら、そっと彼が着ているパーカーの中へと手を忍ばせる。吸いつくような肌の感触を楽しみながら、胸元へ向かって手を這わせた。
「心臓の音、すごいな」
少しだけ唇を浮かして囁くと、胸の鼓動がまた一段と早くなった。自分だって人のことは言えないのに、なんだかおかしくてついニヤけてしまう。
「い、言うなよっ! ひゃ、あっ……」
きゅっと胸の尖りを抓りあげた瞬間、誠は声をあげて体を震わせた。
「感じる?」
「あッ、ん、ぅ……だ、だから言うなって」
指先でそこを弄びつつ、いい気になって言葉でも責め立ててみる。
初めて体を重ねたときは緊張で頭がいっぱいだったが、あのときと比べれば少しは余裕が出たのか、嗜虐心のようなものを感じていた。
「邪魔だな」
言いながら誠のパーカーを脱がせて、ついでに自分もジャケットとシャツを脱いだ。
それから再び薄い胸板を撫でまわす。胸の先端はすっかり硬く尖っていて、コリコリとした感触を指の腹に覚えた。
やんわりと突起を押したり、引っ張ったりしながら、新たに露わになった鎖骨へ舌を這わす。薄い皮膚に軽く歯を立てたあと、力を込めて吸いあげてやれば、誠の口から甘美な声が零れ落ちるのだった。
「や、あぁっ……」
(可愛すぎだ、バカ)
もっとゆっくり可愛がりたい思いもあるが、どちらかといえば気が急いてしまう。
鬱血の痕に軽くキスを落として、今度は下腹部へ手を伸ばした。
太腿に手を這わせるなり左右に割り開く。ずっと硬い感触を腹に感じていたので、そこがどうなっているかは察していた。
「キツいだろ」
ベルトを外してジーンズの前を寛げてやる。少し湿り気を帯びた下着をずらすと、勃起した屹立が剥き出しになった。
先端からは雫がとろとろと零れており、ずっと刺激を待っていたようだ。鈴口を割るように指先で触れれば、ビクッと誠の腰が浮く。
「あ、うっ……」
「もう濡れてる」
その言葉に言い返そうとする意志を感じた。しかし、大して何も思い浮かばなかったらしく、誠は口をきゅっと閉じる。
「ん……」
眉は八の字に寄っていて、羞恥のせいか瞳を潤ませている。煽情的な姿に己の情欲が煽られるのを感じた。
「誠、口でしていい?」
「え?」
問いかける形だったが、つい返事を聞く前に体が動いてしまう。身をかがめるなり躊躇なく屹立に口づけて、裏側の根本から舌を這わせた。
「へっ!? やっ……そこ、そーゆーコトするもんじゃ、う、あっ……」
そこまでの知識がないのか、誠が驚愕の声をあげる。
音を立てて先端に吸いつくと、「信じられない」といったふうに、ヤダヤダと首を横に振ってこちらの頭に手をかけてきた。ただ、押し返すほどの力はないようで、彼の行為はクシャクシャと髪を乱しただけに過ぎない。
「あっ、や、ん……や……」
視線を上に向ければ、泣きそうな表情を浮かべている誠と目が合う。かあっとさらに顔を赤くさせたのがわかった。
そのまま見つめながら、反り立った屹立を口に含む。ねっとりと先端の部分を舐めしゃぶってやった。
「んっ……ぅ、あっ」
感じているところを見られたくないのか、誠は顔を背けてビクビクと小さく震える。
手で隠せばいいものを――とも思うが、両手は大樹の頭に伸ばされたままで、それを戻すという思考すら失われているらしい。必死に快感に耐えている有様が見て取れた。
(想像していたよりも、これは……)
こんなにも純粋無垢な相手をいたぶるのはいかがなものか。後ろめたさを覚えながらも、それがまた快感に感じてしまうのだから、自分はどうにかしているに違いない。
煽られるように誠を愛撫する動きを速めていく。根元も手で扱いてやれば、すぐさま誠の反応が変わった。
「や、待っ! あ、でちゃうっ、でちゃうぅ……ッ」
先端をきつく吸いあげた瞬間、誠の雄はドクンッと脈打って熱を爆ぜさせる。
「……っ」
口腔で受けきれなかった白濁が零れ落ち、口元をぺろりと舐めてから手で拭う。さすがに飲み干すまではいかないが、想い人の欲望の証だと思えば、不思議と味わいたくなってしまうものがあった。
「少し待ってろ」
荒い呼吸を繰り返す誠に声をかけて、サイドボードへ手を伸ばす。引き出しから、液体の入った半透明のボトルと、掌大程度の小さな箱を取り出して手元に置いた。
その程度の知識はあるらしく、誠は目を大きく見開く。
「そんなのいつの間にっ」
「そうだな。初めてしたときはなかったな」
これからの行為に使われるもの。言うまでもないが、ローションと避妊具だった。
誠のジーンズを下着ごと完全に剥ぎ取ってから、ローションで指をたっぷりと湿らせる。
少し体温で温めて、まずは中指を窄まりに宛がった。ぬめりを纏った指はあっさりと第一関節まで潜り込んでいく。
ともだちにシェアしよう!