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scene03-09 ★
「ちょっ……」
返事をする間もなく、手を引かれてベッドに招かれる。ゆっくりとした動作で押し倒され、すぐに雅が覆い被さってきた。
あの夜と、状況こそ違うものの同じ光景だ。思い出した途端、体が火照ってしまうのを感じた。
(ヤバい……もっと求められたいって思っちまってる。マジでそういった趣味ねーのに、どうにかしてる)
霞がかかったように思考がぼんやりとしている。いつの間にか戸惑いも深くに沈み、目前の顔を見ていると胸のあたりが疼いた。
これは求められることに対しての嬉しさか、それとも――と考えているうちに、玲央の口が自然と動いた。
「藤沢、この前みたいにしろよ」
「いいんですか?」
「こっちがしろって言ってんだろーが。二度もハズいこと言わせんな、アホ」
悪態交じりに言うと、フッと雅が微笑みを浮かべる。体のラインを手でなぞられて、玲央はくすぐったさに身をよじった。
「っ……」
「可愛い。服、脱がせちゃいますね」
そんな言葉とともに、玲央のサマーニットとインナーがするりと脱がされ、華奢な上半身が露出する。
遺伝的に筋肉がつきにくい体質をしており、体を見られるのは苦手だ。少し嫌な気分になって、上体を起こすなり雅の衣服に手をかけた。
「お前も脱げよ」
有無を言わさず脱がすと、厚い胸板と割れた腹筋が露わになった。予想だにしなかったあまりの体格差に愕然とする。
そんな玲央のことを気にも留めず――いや余裕がないのか――、雅はイタズラっぽく笑って、ベッドに再び押し倒してきた。
「気持ちよくしてあげますね」
軽い音を立てて、胸元に口づけが落とされる。
小さな尖りを舌先でねっとり舐められ、食むように唇で弄ばれれば、そこは熱を帯びてむず痒い痺れが広がっていった。
「っ……くっ……」
漏れてしまいそうになる吐息を必死に殺す。男のくせに、こんなところで快感を得てしまう自分がやはり屈辱的だった。
しかし、やんわりと歯を立てられ、もう片方の尖りも指で抓られた瞬間、
「ん、あぁっ……」
バッと手で口元を押さえるがもう遅く、雅が目を細めて嬉しそうにしていた。温厚な笑みだが、瞳の奥底に光るのは情欲に満ちた雄のそれだった。
「我慢しなくていいのに。気持ちいいなら、声出してくださいよ」
「い、嫌に決まってんだろ、そんなのっ! 女みてえな、ん……ッ」
「俺はそういった声、もっと聞きたいな」
甘えるように言いながら、雅は手を滑らせて下肢を撫でてくる。
「スキニーじゃキツいですよね」
「う、あっ、おいコラッ!」
軽い力で腰を浮かされると、いとも容易くスキニーも下着もずらされて、昂ぶりが外気に晒される。すでにそこは、熱を帯びて硬くなり始めていた。
「もしかして、さっきからずっとこうでしたか?」
「んのっ……恥ずかしいことばっか言いやがって!」
「だって、獅々戸さんが可愛くて」
雅は先端にちゅっと軽く口づけるなり、躊躇いなく口に含んだ。
予想外の行為に心臓が飛び跳ねる。異性との性交はあったがこんな経験はない。口腔のねっとりとした感触に包まれれば、体がすくみ、羞恥と困惑で涙が滲んだ。
「なに、しっ――あ、あぁ……っ」
ちゅくちゅくと吸いつかれて、強い刺激に思わず腰が揺れる。そのうち背筋をゾクゾクとしたものが伝って、息も段階的に上がっていった。
「獅々戸さんのここ、ピクピクしてる。気持ちいいですか?」
「うるせえよッ。も、言うな……!」
「強情っぱり。こっちは正直みたいですけど」
「ぅ……く、ぅ……」
口淫はますます激しくなっていく。
括れを唇で締めあげるように扱かれ、先端を丹念に舌で弄られ……そこに根本を擦る手の動きが加われば、得も言われぬ快感の波が襲ってくる。
次第に熱い衝動がじりじりとせり上がってきて、なんとか雅の頭を引き剥がそうとするも、まったく力が入らない。悔しくて、知らずのうちに涙が頬を伝った。
「く、ッ……ふ、藤沢、離せ……っ」
「そろそろイキそう?」
屹立を咥え込んだまま、上目遣いで雅が問いかけてくる。
己の限界が近いのは察しているけれど、口にするのが恥ずかしく、首を横に振りながら玲央は抗った。
「いいからっ……もう」
「いいですよ、出しちゃってください」
「や、待っ……ぁ、くッ!」
きつく先端を吸いあげられて、追い立てられるがままに口内へ欲望を爆ぜさせてしまう。
雅の口元からとろりと白濁が零れ落ち、それを指で拭う仕草がやたらと煽情的で、頭が沸騰しそうな勢いだった。
「バカ野郎ぉ……クソ食らえってんだっ」
居たたまれない気持ちになって、恨み言を並べつつ顔を手で覆う。射精後の倦怠感から、しばらくそうしていると、不意に衣服を剥ぎ取られる感覚がした。
視界を取り戻せば、ローションのチューブを手にする雅の姿があった。
最初こそ理解ができずにぼんやりと見ていたが、次の瞬間にギクリとする。膝を割られて、秘所に雅の指が添えられたのだった。
「は!? お、おいッ、そんなことまで許してねーぞ!?」
「すみません。ここまでする気はなかったんですけど……我慢できなくなりました」
口調から余裕のなさがうかがい知れた。だからといってさすがに、と抗おうとしたのだが、彼は間髪をいれずに長い指を捻じ込んできた。
「え? えっ……こ、これ、入ってる!?」
「はい、入っちゃってます」
「なっ――ちょ、ッ……」
ローションの滑りを借りて、造作なく体内に潜り込んできたそれに戸惑う。
痛みはないものの、初めて味わうヌルヌルとした異物感に不快感を感じざるを得ない。
緩慢な動きで掻き回されれば、体の内側を弄られる感覚に身の毛がよだった。
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