23 / 142

scene03-10 ★

「テメッ……な、何しやがンだよ!」  体を動かしてなんとか指を抜こうと試みる。しかし、すぐにがっしりと取り押さえられて、身動きが取れなくなってしまった。 「だって男同士でもできるでしょ? 獅々戸さんってば、一人でイッちゃって生殺しじゃないですか」 「バッ……し、知るかボケ! あ、んッ……」  ローションを足しながら指を増やされ、内壁をさらに圧迫される。  ゆっくりと抜き差しされるたびに、ぞわぞわという感覚が体を駆け巡った。  腰をくねらせて逃れようとしても決して許されることはなく、しなやかな指の動きにただ翻弄されていく。 「んっ……く、ぅ……」  きつく閉ざされていた窄まりは次第に蕩けていき、肩で息をし始めた頃になって、やっと指が引き抜かれる。  ところが、呼吸を整える間もなく臀部をグイッと上げられ、今度は熱く滾ったものが後ろに宛がわれた。  解された時点で察していたが、いざこういった状況になると、恐怖心で体が強張ってしまう。しかも、彼の男根は一般的なものよりいくらか大きいのではなかろうか。 「ちょ、待てよっ……うそ、そんなの入るワケ……せ、せめて素股とかっ!」  待ったをかける声が虚しく響く。雅は自身の先端を擦りつけると、容赦なく押し込んでくるのだった。 「――ッ、ああ! く、うぅ……っ!」  強烈な圧迫感に背をしならせ、苦痛の叫びをあげる。  本来そうできていない入り口を無慈悲に押し広げられ、痛いのと苦しいので呼吸が困難になって、口をパクパクとさせた。 「獅々戸さん、力抜いて……」 「む、りぃ……むり、だってのっ」  涙を零しつつ答えれば、雅はさぞ申し訳なさそうに軽く触れるだけのキスをしてくる。 「ごめんなさい。でも、本当に獅々戸さんのことが好きで仕方なくて……あなたを求めたいって気持ちでいっぱいなんです」 「………………」  彼の考えは矛盾している。本人が気づいているのかは不明だが、それは立派なエゴイズムだ。  やはり恋愛において、愛他的な感情なんて存在しないのではないか。どうやったって結局のところは、相手を浅ましく求めてしまう本能的なものがあるのかもしれない。 (仕方のない後輩だ――女扱いされて野郎に抱かれるとかマジねーし、癪だけど……)  苦しげな表情を浮かべる彼のことを見ていたら、落ち着きが出てきた。  ままならなかった呼吸が意識せずともできるようになり、恐怖や緊張といった感情もだんだん薄れていく。 「いいよ。ここまできたら、最後までしちまえよ」  また虚勢を張って、格好つけてしまう自分に内心苦笑した。  雅はもう一度謝ってから、 「なるべく優しくするんで」  そう告げて、ゆっくりと腰を押し進めるのだった。 「うっ……く、ぅ……っ」  異物がギチギチと入ってくる。意識を持っていかれそうになって、堪らずシーツをぐっと掴んだ。  本当はこんなことまでする必要はないのだろう。やりようは他にもあるはずだ。  それでも、ああも求められてしまったら――どうにか受け入れてやりたい一心で、雅のすべてを体内に収めるのだった。 「っ、藤沢……ボサっとしてねえで動けよ」 「でも」 「いいから……っ」  リードするように言ってやると、緩やかなストロークで律動が始まった。  異物感には少しずつ慣れてきて、多少の余裕が生まれたのか、鈍い痛みの中に甘い感覚を覚え始める。  微かな快感を手繰り寄せようと意識を向け、荒い息を吐きながら口を開いた。 「く、っ……も、もっと、強くしろ……」  それに応えるように、雅が最奥へ自身を突き上げてくる。ガクンッと玲央の体が大きく仰け反った。 「あぁっ!」  内壁が屹立に引きずられる感覚がして総毛立つ。荒々しい抽挿が繰り返されれば、自分のものとは思えない嬌声が零れ落ちるのだった。 「ぁ、あ……あ、バッ、激しすぎ……っ」 「獅々戸さんが、いいって許してくれたんですよ?」 「んっ、バカやろッ……あっ、あぁ……」  あんなにも痛くて苦しかったのに、嘘みたいに気持ちがいい。いや、神経が麻痺して、痛みが快感へと変わってしまったのだろうか。  このままどうにかなってしまいそうで、縋るように雅に抱きついた。 「可愛い」  低い囁きが鼓膜を揺らす。  と、同時に腹の奥がきゅっと締まる感じがした。当然、相手もそれに気づいて笑う。 「獅々戸さんのここ、俺のこときゅってしました」 「いっ、言うなバカバカッ――っ、あぁっ」 「もうお喋りはいいですか? 俺、そろそろ……」 「っ、あ……ばかっ、あっ、ン……ッ」  羞恥と屈辱が頭に広がっていくなか、腰の動きはますます大胆になって、内壁を抉るように突き上げられる。 「や、ぁ……くっ、こんなのっ」  ガクガクと揺さぶられて、自分が自分でなくなるような錯覚に陥っていく。  こんな荒々しいセックスは知らない。しかも、男に抱かれているというのに――そのような思考も快感の波にさらわれて、意識すらどこかへ飛んでしまいそうだった。 「あ、ぁ……も、藤沢っ」 「俺もですよ。だから一緒に……」  雅が屹立に指を絡めてくる。追い立てるように濡れそぼった先端を扱かれれば、堪ったものではなかった。 「あ、やっ、やめ、ああぁ……ッ!」  成す術もなく、強烈な絶頂感とともに欲望が噴き出す。追って、雅の低い呻き声が聞こえて、体内に熱がじわりと広がった。 (あ……中、出されてる……)  ドクンドクンと脈打つ雅のものを感じながら、ゆっくりと体の硬直を解いていく。しばし放心していたら、雅が顔を覗き込んできた。 「すみません。中に出しちゃいました」 「……別に。男なんだし、ちゃんと洗えば問題ねーだろ」 「………………」 「ンだよ」 「いえ、獅々戸さんのことが好きだなあと改めて思って」  汗で張り付いた前髪をそっと上げられ、額に口づけられた。  玲央は目を伏せつつも、こそばゆい感覚に心を揺れ動かされていたのだった。

ともだちにシェアしよう!