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scene05-03 ★

「この棟、下の階を荷物置きに使ってるだけですけど……念のため、あまり大きな声は出さないでくださいね」  雅の言葉を背後で受けながら、今の状況を確認する。  二人がいるのは、男子トイレの個室だった。  進入禁止のテープが張られた棟に忍び込み、看板やカメラを廊下の隅に置いて、雅に手を引かれるがままに……と、あれよあれよという間にこんなことになってしまったのだ。 (って、フツーに考えてありえねーだろ! 理性とかどうしちまったんだよ!)  狭い個室の中、混乱しながら突っ立っていたら後ろから抱きしめられた。 「すごく可愛いです。みんな言ってましたけど、やっぱり似合ってます」 「いや、似合う似合わないの問題じゃねえだろ」 「でも俺、わりとこういうの好きだったみたいです」 「なっ、この変態野郎! バッカじゃねーの、物好きにもほどがあんだろ!?」 「ふふ、可愛い」  エプロンドレスの上から、雅が骨ばった手を這わせてくる。  指先が胸の突起に行きつけば、緩慢な動きで弄られ、服が擦れて痛みをともなった快感がじんわりと広がった。 「もうこんなにぷっくりしちゃってる」 「ッ、ん」 「ここも、すっかり感じるようになっちゃいましたね」 「バ……カッ……」  ゆっくりとした責め立てに、じれったくなって身をよじる。さらに言えば、誰かが来たらどうしようかと気が気でなかった。  「そ、そーゆーのいいから、やるなら早くしろよ……誰か来たら困るっ」 「獅々戸さんがそう言うなら」  ワンピースの中に手が伸びてきて下着を下ろされる。窄まりが露わになると、そっと指でなぞりながら雅は言った。 「ここ、解すんで……服をたくし上げててくれませんか?」 「え?」 「これをこうやって」  と、服の裾を摘まんで持ち上げられる。 「バッ……そんな女みてえなこと、やってられっか!」 「駄目?」 「ッ、クソったれ! すりゃいいんだろ、すりゃ! 先輩に指図しやがって!」  自分はここまで押しに弱かったのだろうか。年下らしい甘え口調で言われると、聞き入れてやらなければ、という気分になってしまうのだ。  仕方なしに、おずおずとエプロンドレスをたくし上げる。羞恥と期待の入り混じった感情が、麻薬のように脳内を刺激した。 「これでいいんだろ?」 「はい、ありがとうございます。それじゃ失礼しますね」  その瞬間、湿り気のある感触を感じてギクリとした。 「えっ!? あ、く……ッ!?」  ビクッと背がしなって、個室のドアにもたれかかる。  首を捻って肩越しに雅の方を見たら、彼は身を屈ませて双臀に舌を這わせていた。あまりにも信じられない光景にパニックを起こす。 「なにして……ンだよっ、そんなとこ汚い……ッ、あぁっ」 「さすがにローションは持ち歩いてないんで。大丈夫、汚くなんかないですよ」 「あ、あのなあ、だからって――っ、ま、待てっての!」  ぬるりと内側まで入ってきた舌に動揺し、腰が引けるも、許してくれる気配はない。  音が出るほどに入口をきつく吸われ、内部をなぞるように舐められ……体がゾクゾクと震え上がって奇妙な感覚に翻弄された。  次第に唾液が伝うようになると、今度は長い指が潜り込んでくる。 「く……っ、ンッ、ふ……」 「獅々戸さん、えらいですね。ちゃんと服たくし上げて」 「ば、バカ……こっ恥ずかしくて……し、仕方ねーっての」 「知ってますよ。ああ、もう二本目も入っちゃいますね」 「ん、ぁ、は……っ」  すぐに指を増やされて息を呑んだ。窄まりは小さく水音を立てて、すんなりと奥深くまで受け入れる。 「獅々戸さんのここ、もうこんなに広がってる」 「う、くっ……ん、んっ」  最初はゆっくりだった指の動きも、たちまち早急なものになっていく。体内を押し広げられて、己のそこは徐々に形を変えていった。 「も、いいから……早くしろ」  催促すると、「わかりました」という声が返ってきて、指を引き抜かれる。 「服、汚すといけないので、獅々戸さんもゴムしましょうか」  言って、雅は財布の中から避妊具を取り出す。歯でパッケージを破るなり、後ろから抱きすくめるようにして、玲央のものに被せようとするのだった。 「自分でやるからいいっ」  少し冷静さを取り戻して、自分で屹立に装着する。  ちらと雅のことを横目で見れば、ちょうどジーンズのウエストを緩めて、昂ったものを取り出しているところだった。避妊具を被せる生々しい姿に、これからの行為を強く意識させられてしまう。 「このまま、腰落とせますか?」雅が便座に腰かけて言った。  後ろから腕を回されて引き寄せられる。自ら挿入してほしいということだろうが、 「むっ、無理無理! さすがにそれは無理!」 「無理じゃないです。ちゃんと支えてあげますから、ね?」 「そーゆー問題じゃねえっ!」 「獅々戸さん。早くしないと誰か来ちゃうかもしれませんよ?」  ずっと気にしていたことを、雅は煽るように口にする。催促したのはもともと自分だし、そう言われると弱い。 「く……ムカつく。どこまで俺を辱しめれば気が済むんだよ、このド畜生が」  悪態を吐きつつ腰を寄せると、クスクスという笑い声が背後から聞こえた。 「すみません。でも、何だかんだ言ってやってくれるんですね」 「うっぜえー……」 「あ、また服の裾掴んでくださいね。汚れちゃいますから」 「わかっとるわッ!」  口では強がっていても、恥辱で顔から火が出るような思いだった。  先ほどと同じようにワンピースを持ち上げる。角度を調整してもらいながら、恐る恐る腰を落としていくと、ちょうど秘所に雅の強張りが当たった。 「……ッ、く、うぅっ」  ぐぷりと先端を呑み込む。その瞬間、圧迫感と痛みが襲ってきて掠れた声が漏れた。  力が抜けそうになる腰を雅に支えられ、手助けされるようにして、ゆっくりと繋がりを深めていく。が、つい浮き腰になってしまう。 「これ以上、入んねえ……あ、ぅっ!」  音を上げたら、小刻みにピストン運動をされて体が跳ねた。  慣らすように屹立が内壁を広げていく。そうしているうちに、それは体内にすべて収まり、ちょうど雅の膝の上に座る形になったのだった。

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