35 / 142

scene06-04 ★

「ヤバい、恥ずかしすぎるっ」 「好きなヤツで抜くのは、なにもおかしなことじゃないだろ」 「いや、そうだとしても」 「……俺だって普通にするし。こうして付き合うまでは罪悪感だらけだったけど」 「ちょ……ええっ!? そんなの聞いてな、ひぁッ!」  唐突な突き上げを食らって、体が飛び跳ねた。  なにやらとんでもないことを聞いた気がするが、激しい抽送を受ければ、考え事をしている余裕なんてなくなってしまう。 「俺のこと、意識してくれて嬉しいよ」 「あ、んっ、や、待っ……ああっ」 「ほら、さっき一人でしてたみたいにやって」  手を取られて、反り返った自身を握らされた。できないに決まっているのに――、 「……誠」  脳髄を溶かすような甘い響きに、わずかに残っていた理性もかき消されていく。 「ん、ぅ……あ、あっ、あぁっ」  気がつけば、ガクガクと揺さぶられながら自身を慰めていた。快楽の海に溺れて、奥深く咥え込んだ大樹をきつく締めあげていく。 「あっあ、ン、あ……きもち、いっ……」 「そろそろイキそう?」  大樹が問いかけてきて、途端に視界が明るくなった。 「へ……あぁ、えっ?」  思考が停止する――目の前には、大樹の優しげながらも余裕のなさそうな顔があった。視界を奪っていたネクタイが外されたらしい。 「なななっ」  何故こんなときに外すのか、そう思うも言葉にならない。 「これ、止めていいのか?」  自身を握っていた手に、大樹の手が重ねられる。恥じらいを感じる間もなく強制的に動きを再開させられた。 「あ、ああっ、やっ……い、いじわるッ!」 「好きだから意地悪したくなるんだ。ここも、ずっと欲しかったよな」 「ぅあっ! あぁっ、そこ、いいっ……」  ずっと欲しかった敏感な部分を抉られて、一気に意識を持っていかれる。あっという間に高みへ追い立てられて、欲望がほとばしる兆しを感じた。 「んぁっ、あ、あぁ……も、イッちゃう、イッちゃうからぁっ」 「イッて、誠。俺もすぐだ」 「ああっ、ン、ああぁあぁ……ッ」  頭の中で白い光が一瞬にして爆ぜる。大樹の分身も大きく脈打ち、体内に熱い飛沫が放出された。 (あったかくてきもちい……)  まるで身も心もあたたかく満たしてくれるようだ。ぼんやりとした意識で考えながら、体の緊張を解いていった。  しばらくベッドの上で余韻を味わうように抱き合っていたが、誠にも理性が戻ってきて、あれやこれやで頭を抱える思いだった。 「大樹のバーカ。このむっつりスケベめっ」  真っ先に出てきたのは恨み節である。 「嫌だった?」  大樹が真顔で訊いてくる。どちらかといえば“よかった”の部類なので、どう返したものか、答えに窮してしまう。 「たまにはいい、かも」  それで通じたらしく、大樹は微笑んだ。  こうして確認してくるあたり、自分がいかに大切にされているかが伝わってきて、むず痒い気持ちになる。 「そういえば」大樹がふと呟いた。 「えっ、もしかしてチキンとケーキ忘れた?」 「それは買ってきた」  忘れたとしたら一大事だったので、ほっと胸を撫で下ろす。食いしん坊の誠としては、あってはならないことだった。 「じゃあ、なに?」 「……プレゼントも用意すべきだったと、今になって気づいた」 「え、俺だって、なーんも用意してないよ?」 「いや……」 「それに、誕生日はともかく、クリスマスにそーゆーのしてこなかったじゃん」  思い返すと、小学生の頃はお互い何かしら用意していた気がするが、いつの間にか何も渡さなくなっていた。  むしろ、年頃の男同士で交換していたら――と、ここで思い至った。 「そっか、俺たち恋人同士になったんだもんな……」  気恥ずかしげに言うと、大樹が頷いた。  幼馴染としての付き合いが長すぎて失念していたが、恋人同士で過ごすクリスマスといったらプレゼントは必要不可欠だろう。 (つーか、自分ばっか不機嫌になってたけど、大樹だって本当はこういったイベントやりたかったに決まってんじゃん)  大樹はこう見えて恋愛映画が好きで、ロマンチストなところがある。ポーカーフェイスを浮かべているが、そんな男がクリスマスというイベントに惹かれないわけがない。  よし、と意気込んで大樹の顔を見上げた。 「明日出かけよ! でもってプレゼント買う!」 「ああ、そうだな。今日は寂しい思いさせて悪かった――明日はうんとデートしよう」 「お、お前なあ」  含みのある言い方にムッとしつつも、明日のことを想像する。  ――何をプレゼントしようか、何か欲しいと言っていたものはあっただろうか。行くならどこに行こう、テレビで見たイルミネーション特集はどこだったか。  そんな考えをよそに、誠の腹が音を立てて、大樹が「シャワー浴びて飯にするか」と苦笑しながら言ったのだった。

ともだちにシェアしよう!