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scene12-03 ★

「バカッ、他のヤツすぐ隣にいるんだぞ!? 前も言った気ィすっけど、自制とゆーものをだなっ!」 「ちょっとだけですって」 「お前の言う『ちょっと』は信用ならん!」 「玲央さん」  気づいたときには、もう唇を奪われていた。  食まれているうちに開いた唇から、雅の舌先がするりと滑り込んでくる。ざらりとした感触が口内を這い、追い求めるように舌同士を絡め合わせた。  甘美な刺激にゾクゾクと背筋が震える。少しずつ息が上がって頭がぼうっとしてくると、そっと押し倒されて、玲央は雅のことを見上げる体勢になった。 「玲央さんだって誘ってるじゃないですか、こんな顔して」  指先で顎を持ち上げて、まっすぐに見つめられる。  優しげな笑顔を浮かべているが、こちらを射抜く眼光は肉食獣のようだった。  そしていつからだろう。その瞳に見つめられるだけで、溺れるように欲情してしまうようになったのは。 「マジで軽くだけだからな……あと、あんま汚すな。温泉入ったのに、シャワーとか浴びたら変だと思われる」 「はい、善処します。玲央さんも、声出さないようにしてくださいね」  言って、雅は耳朶に口づけてきた。甘く噛まれれば小さく吐息が零れ、痺れるような熱がじんわりと広がっていく。 「ここも、すっかり敏感になっちゃいましたね」  耳元での囁きとともに、乳首の周囲をくるくると指先で撫でられた。巧みに焦らす手つきに、玲央の上半身が悩ましげに揺れる。 「っ、ん……焦らすなよ」 「焦らされるのは嫌いですか?」 「知ってるくせに」  クスッという笑い声が返ってきて、やっと先端に触れられる。  爪を立ててカリカリと引っ掻かれ、押しつぶされそうなくらいに摘ままれ……痛みを感じるくらい、強めの刺激を与えられればもう堪らない。 「く、っ……」  すでに下腹部は熱を持っており、はちきれんばかりに勃起している。  気づけば性欲に突き動かされて、ねだるように腰を雅の腹部に擦りつけていた。雅は目を細めて意地悪に笑う。 「玲央さんのエッチ。体の方はずいぶん正直なんですね」 「あ……ちがっ、これは」 「違わないでしょ。玲央さんの、すっかりトロトロじゃないですか」 「……っ」  下着越しに先端をグッと押されて、体が自然と反応した。ところが、 「でもそんなことされちゃうと、逆におあずけしたくなっちゃうなあ」  冷たい言葉に胸が締めつけられる。咄嗟に否定してしまったことを少し悔やんだ。 「あは、可愛い」再び雅が笑う。「代わりに後ろなら触ってあげてもいいです。欲しかったら、俺の指舐めてください」  人差し指が伸びてきて、玲央の薄く開いた唇にやんわりと押し付けられた。  甘い誘惑になけなしの理性が揺らぐなか、雅が指先でつついてくる。  ここが今どこで、何のために来ているのか。理性的な思考も次第に消え失せた。 「んぅ……」  口を開いて舌を出すと、雅の指を口内に迎え入れる。舌を絡ませているうちに唾液が出てきて、チュパチュパと卑猥な音が立った。 「ん、ふ、んんっ……」 「ほら、もっと舐めてください。これがあなたの中に入るんですよ?」  中指、薬指と一本ずつ指が増やされ、ゆっくり出し入れされれば、まるで口腔を犯されているような気分になる。  辱しめを受けていることに涙で視界が歪むも、少しも嫌ではなくて、むしろ快感とさえ思えていた。 「ふふ、よくできました」  唾液が口元から糸を引くようになった頃合いで、指を抜かれる。  雅は片手で玲央の下着を脱がすと、反り立った屹立には一切触れず、後ろに濡れた指を添えた。  先ほどまでしゃぶっていたそれは、第一関節までスムーズに侵入してくる。上側にクイッと曲げて、感じやすい部分を圧迫するように撫でられれば、知らずのうちに玲央の腰が浮いた。 「ぅ、っ……ん……」  体の緊張が解けていくにつれ、指を増やしながらさらに愛撫されていく。規則性なくバラバラに蠢く指に翻弄されて陶酔を味わう。 「く……っ、ン、ふっ」  上擦った声が出そうになるのを、下唇を噛み締めて堪えていると、血管を浮き上がらせている自身に雅が指を絡めてきた。 「声、我慢してえらいですね。いい子にはご褒美――こっち、欲しがってましたよね」  先端から滴る体液を掬い、それで全体を濡らすように扱かれる。ぞわぞわとした快感にまた腰が重くなった。 「んっ、ん……んんッ」  内側の責め立ても止むことはない。内も外も敏感な部分をいじられてしまっては、否が応でも、すぐに限界へと追いやられてしまう。 「ぅ、あ……も、すんな、みやびっ」 「嫌? イきたいんじゃないんですか?」 「っ、んッ……」 「一緒がいい?」  コクンと首を縦に振る。一度達してしまったら、声を我慢することなどできないような気がした。  こちらの返答を受けて、雅が指を引き抜く。玲央が乱れた呼吸を落ち着かせている間に、バッグから避妊具のパッケージを二つ取り出してきた。 「ゴムつけますね」  雅はパッケージを破って中からゴムを取り出す。唇で精液だまりの部分を咥えるなり、玲央の先端に持っていき、そのまま頭を落として器用に被せた。 「……マジかよ」  呆然とする玲央をよそに、雅の方も準備を終えたようだ。それから続く言葉は、 「お尻、こっちに向けてくれますか?」 (でもって、どうして笑顔でそーゆーコト言うかな)  顔をしかめながらも、言われたとおりに四つん這いの体勢を取る。  別にこれが初めてではないし、男同士だと後背位の方が互いに楽であることはわかっているのだが、どうにも抵抗がある。自分の局部を突き出していると思うと、羞恥で頭が沸騰しそうになるのだ。 「ふぁっ!?」  唐突に臀部を揉まれて、間の抜けた声が出た。クスクスとイタズラっぽく笑っている雅を、肩越しにきつく睨みつける。 「バッ、バカ野郎! テメェはエロオヤジかっ!」 「あはは、ごめんなさい」 「その顔ムッカつく~」 「今度はちゃんとしますって。ああ、俺の枕使っていいんで、これで声抑えてください」

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