「せっかくムード作ったのにひどいです！　玲央さんから誘ったくせに！」 　不機嫌そうな声とともに、頭からシャワーを浴びせられた。まだ温水になっておらず、あまりの冷たさに体がすくむ。 「悪かったって！　つか冷てえよ！　それに服！　服くらい脱がせろッ！」 「もう温水になるから大丈夫です！　服もちゃんと洗います！」 　言い合っているうちに、二人揃ってずぶ濡れになっていた。 　雅はシャワーを置いて迫ってくるなり、手で顎を掬うようにして、甘ったるく口づけてくる。予期せぬ不意打ちに玲央が退くと、浴室の冷たい壁が背に触れた。 「シャワー浴びたからいいですよね」 　そう言う雅の顔は、笑顔ではなく不満顔だった。 「いやさ、そこまで不機嫌にならなくてもいーじゃん……なに、溜まってた？」 「はい、溜まってました。玲央さんのこと抱きたくて、毎日どうしようもなかったです」 　少しも躊躇うことなく真顔で返されて、面食らう。 　先ほどまで心配してくれた優男は、一体どこへ行ってしまったのやら。性欲とは恐ろしいもので、どうやらいつもと違う変なスイッチが入ってしまったらしい。 「雅サン？　間違いなく、今のお前はおかしいから落ち着いて――ひ、ぅっ！？」 　突として首筋を舐められ、思いもよらぬ声が出た。 　Ｙシャツのボタンを外されて、徐々に下へと口づけが落とされていく。 　ぬめった感触が乳首に到達すると、歯を立てられてビクンッと体が跳ねた。片方の尖りも指で押し潰すように摘ままれれば、自然と熱を帯びた声が出る。 「ま、まさかとは思ってたけど……こんな……う、くッ」 　抗議の声をあげるも、雅は責め立ての手を止めてはくれない。 　浴室なのをいいことに、濡れそぼった肌を執拗に口で愛でられていく。 　じっとりと舐められ、吸いあげられ、噛みつかれ……気がつけば玲央の息はすっかり上がっていて、下腹部にも熱が集まるのを感じていた。 「だから、やだ……つってンじゃんっ」 「とか言って、ここを硬くしてるのは誰ですか？」 　スキニーのボタンが外されて下着ごと下ろされる。はち切れんばかりに勃起した屹立が、ふるりと震えながら外気に晒された。 「っるせ……あ、ぁっ！」 　先の方を指先で軽く抉られるだけで腰が跳ねてしまう。自分でもしばらく触っていなかったせいか、今すぐにでも爆発しそうな勢いだ。 「そこ、いいから……触んなっ」 「イッちゃいそう？」 　コクコクと頷くと、雅に肩を掴まれて向きを反転させられる。 　その瞬間ギクリとした。今まで背を付けていたのは鏡だったらしく、――普段からきちんと掃除がなされている分――紅潮した自分の顔がくっきりと映っていた。 「あッ！　くっ……んんッ！？」 　意識が鏡の方へ向いていたせいで、何の心の準備もなかった。 　双丘をがっしりと掴まれ、生温かい舌が体の内側を舐めまわす感触がする。体内で蠢くそれを意識すれば、ぞわぞわという嫌な感覚が背筋を伝っていった。 「や、ぁ……っ、舌、やだっての」 「濡らすだけだから、ちょっとだけ我慢してください」 「っ……あ、ぁ」 　鏡に手をついて、なんとも言い難い不快感を身震いしながらやり過ごす。 　唾液が滴るようになったところで、間髪をいれずに雅の長い指が差し込まれた。 「はっ……ン、ふ……っ」 　抜き差ししながら、ゆっくりと中を広げられて入念に慣らされていく。内壁の敏感な部分をやんわり圧迫されるだけで、体がぐずぐずに蕩けてしまいそうだ。 　やがて指の動きが大きくなってくると、そこが物欲しげに収縮を繰り返すようになる。 　粘膜が彼の指に絡みついているのが自分でもわかって、「もういい」と遠回しに懇願した。鏡越しに二人の視線が合う。 「欲しいですか？」 「……わざわざ訊くなっての」 「すみません。本当は、おねだりしてほしいところなんですけど――」 「あ……っ」 　臀部をそっと撫でられて、小さく声を漏らす。 「俺も、玲央さんの中に早く挿れたい」 　言って、これ以上ないほどに熱く昂った屹立を突き立てられた。 　息を吐いて力を抜こうと思ったとき、 「ああぁあッ！？」 　雅は最奥まで一気に穿ってきた。玲央の背が大きく仰け反り、前面の鏡にびしゃびしゃと大量に飛沫が飛び散る。 「ぁ……あ、ぁっ……」 　強すぎる衝撃に、目の前をチカチカと星が舞う。一瞬飛びかけた意識が戻ってくると、呆気なく達してしまった羞恥に涙が滲んだ。 「あーあ、汚しちゃって。玲央さんは淫乱ですね、挿れただけでイッちゃうなんて」 　意地悪な囁きが追い打ちをかけてくる。そして、息をつく暇もなく再び深々と穿たれた。 「ぅ、ああぁ……ッ！」 　快感が頭の先まで電気のように突き抜ける。引けた腰を掴まれると、その状態から激しくガクガクと揺さぶられて、腰が砕けてしまいそうなほどの快感に眩暈を覚えた。 「ちょっ、イッたばっか！　あ、バカッ、あっあぁ……」 「あれ？　まだそんなこと言える余裕あるんですね？」 「あっ！　や、ああぁ……ッ」 　荒々しく奥深くまで突き上げられれば、上擦った声が喉から押し出されるように零れ落ちる。反響する嬌声が浴室内を満たし、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。 「みやびっ、や、やっぱベッド、にっ……ひあっ、あ！」 「嫌です、今日はここでしちゃいましょう。……ああ、こっち見て」 　顎を掴まれて正面の鏡を見させられる。鏡には当然のごとく己の痴態が映っていて、心臓が飛び跳ねた。