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おまけSS おそろいの痕
大樹は天井を見上げながら、小さくため息をついた。
愛しの恋人と性行為をし、その後二人そろってベッドに体を横たえるも、相手が相手ならば色気のあるピロートークに移行するわけもなく。
(やっていること自体は、色気があるといえば……まあ、あるだろうが)
考えにふけっていたら、誠の「うーん」という声が耳に届いた。
「やっぱうまくつかねーな。すぐ消えちゃう」
首筋の皮膚を口で吸われる。どうやらキスマークを残したいらしく、先ほどからずっと奮闘しているのだった。
「ん、駄目だあ……ヨダレまみれにしてごめんな?」
「別にいいけど。というか、そんなに痕つけたいのか?」
「え? うーん、なんとなく?」
「まあ、いつものバカ犬だよな……」
そうであろうとわかっていても、少しだけガックリくる。マーキングの意なんてものは少しも含まれておらず、単なる思い付きに過ぎないのだ。
本当に色気もクソもないと考えていたら、
「ッ!?」
今までとは、比べ物にならないほどの鈍痛が襲ってきた。
さすがに息を呑んで体を強張らせる。こともあろうに、誠が鎖骨に噛みついていた。
「おっ、これなら残りそう! こっちのが楽でいいかも!」
よほど力を込めて噛みついたのだろう。指でなぞってみると、綺麗な歯型がくっきりと残っていた。
(本当にコイツときたら……)
躾とばかりに、出来の悪い頭をはたいてやりたくなる。
だが、無邪気な笑顔を向けられては何もできない。そんな甘い自分がいた。
「へへ、ちょうどおそろいっ」
さらにそう言って、彼の鎖骨に残した鬱血の痕を見せられれば、こちらとしてはもうどうしようもない。
「バカだろ、お前」
「えっ、なんだよ!?」
「……わからなくていい」
言うと、誠はきょとんとした顔で首を傾げた。何も知らず心をくすぐってくるのだから、厄介にもほどがある。
(それでも、このバカが愛おしくて仕方ない)
大樹はまた一つため息をして、愛しい恋人の頭を撫でるのだった。
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