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おまけSS ワンコな日々をいつまでも

「あああ~、マジで可愛いッ!」  よく晴れた昼下がり。高らかに声をあげた誠の足元には、中型犬のビーグルが元気よく尻尾を振っていた。 「おい、リード離すなよ」 「わかってるって! ううっ、可愛すぎる~!」  大樹の言葉を聞き流しつつ、片手でスマートフォンを取り出しては、カメラアプリで写真を撮っていく。  ビーグルは犬カフェ――ワイドショーで取り上げられて気になっていた――でレンタルしたもので、人見知りせず、躾もきちんとなされているようだった。  近隣の公園を一時間ほど散歩することになったのだが、こんなにも人懐っこく接してくれるとは思わなかった。 (って、あれ?)  ビーグルが大樹の足元に寄っていき、クンクンと匂いを嗅いでいる。散歩を開始してから何度目だろうか。 「大樹にばっか懐いてるのなんで? 犬たらしかよ?」 「お前がうるさいからじゃないのか?」  大樹はしゃがんで、手の甲を鼻先に差し出してから、優しくビーグルの頭を撫でる。甘えているのか何なのかはわからないが、ビーグルの垂れた尻尾が大きく揺れた。 (うわ、気持ちよさそうにしてるし)  ここまで懐かれるなんて羨ましいと思いながら、隣にちょこんと座る。それから、ふと思い出したことを口にした。 「そーいや、大樹って猫より犬派だったよな」 「まあ、犬は好きな方だな。表情も仕草も愛嬌があるし、躾がされていれば飼い主に忠実だし」 「あー、俺みたいな? いてッ!」  冗談めかして言ったら、《デコピン》を食らってしまった。 「お前のどこが忠実なんだよ、このバカ犬」 「ひっでえ! ……でも大樹が犬好きでよかったあ。俺さ、いつか犬飼いたいんだよね」 「知ってる」 「あれっ、言ったことあったっけ?」  はあ、と大樹がため息をつく。  どうやら、こちらが覚えていないだけらしい。いつ口走ったのだろうと考えていると、 「こんな日々が、ジイサンになっても続けばいいとか」 「わ! わあああーっ!?」 「オイ、うるさいぞ」  口をつぐむも、バクバクと心臓が耳障りなくらいに高鳴っていた。  前々から考えていたことだったが、まさか当人に伝えているとは思わなかった。 「お、俺、そんなこと言ってた?」 「ああ」 「は、恥ずかしすぎる!」  顔が熱くなるのを感じる。  つい言い訳をしたくなったけれど、咄嗟に思い浮かぶほど頭の出来はよろしくない。 「やっぱ、俺のこーゆーとこ……ガキっぽいかな」  呟くと、大樹がフッと笑う気配がした。 「別にいいんじゃないか。『ともに人生を歩めるパートナーだ』って、言ってくれてるんだろ? それに、誠とならどんな道でも楽しいはずだ」  バカにされるのではないかと思ったのだが、恋愛映画張りの言葉が返ってきて戸惑ってしまう。白昼堂々と何を言っているのだろう、と心底感じた。 「そ、それ、なんの映画のセリフ?」  言えば、大樹は小さく声を出して笑う。  つられて誠も笑い、こんな日々をいつまでも――と改めて思った。その願いはずっと、彼と初めて手を繋いだ幼き日から変わらない。

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