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おまけSS 避妊具の必要性
「誠、風呂入れって」
大樹がベッドの膨らみに声を投げかける。すると、気怠そうな誠の返事だけがした。
「んー……」
(……少しやりすぎたか)
ため息を吐く。体を重ねたあと、ベッドから起きようとしない誠を置いて、先にシャワーを浴びたのだが、浴室から戻ってきても彼は同じ体勢で寝ていたのだった。
「汗かいただろ。それに、ちゃんと洗うって前に言ったよな」
肩を揺すって、言い聞かせるように言葉にするも、
「あとで入るって」誠は子供のように返してきた。
「『あとで』っていつ」
「だから、あとでだってば」
「………………」
(ったく、どうにも痛い目を見ないと覚えないらしいな)
このパターンはどうなることか、すでに知っている。これも教育の一環だ――大樹は心を鬼にして放置することにしたのだった。
その後、やはり予想どおりというか、腹を下してうんうん唸る誠の姿があった。
「ううっ、冷えたあ~」
「ったく、言っただろうが」
呆れながらも腹をさすってやる。いざこういった状況になると、こちらにも非があるので良心が痛むのを感じた。
「やっぱり付けた方がいいよな」独り言のように小さく呟く。
「え、なに?」
「コンドーム」
「なっ!?」
言うと、誠が目を大きく見開く。
「大樹は中に出したくないワケ!?」
そして、よりにもよって誠はそんな言葉を返してきた。
「い、いや……」
男同士とはいえ、体への負担を考えれば避妊具を付けるのが一般的だろう。
ただ、個人的な欲望を優先させるなら答えは変わってくる。それだけに、誠の物言いに言葉が詰まってしまう。
「あっ」
自分の問題発言に遅れて気づいたのか、誠が耳まで顔を赤くさせる。
「……やっぱりさっきのナシで」
「それはないだろ。そう言うってことは、お前」
「!」
誠が手で口元を押さえつけてきて、それ以上続けられなかった。
二人の間に微妙な空気が流れる。しばし見つめ合っていると、観念したのだろうか――誠の口がゆっくりと動いた。
「だって、そっちはどうだか知んねーけど、こっちは感触全然違うし……」
日頃から「せめて自分には正直でありたい」と言う誠は、こんなときでも素直だ。しかし、そこに続く言葉はあまりにも直球すぎた。
「だ、大樹の、感じたいから――中、出してほしい……」
大樹の頭がぐらりと揺れる。金槌で殴られたような衝撃が全身に走った。
「誠」
「え? んっ……んん!?」
気づいたときには唇を奪っていた。同時に胸を撫でまわして、小さな尖りを探り当てる。
「ちょ、大樹っ! な、なに、またすんの!?」
「どうにもならないときは、俺が責任持って洗い流すし、中も丁寧に掻き出してやる。今度からそうしよう」
「いや、まだ腹の調子が整ってないからっ」
「ちょうどいい薬になるかもな」
「えええっ! い、今のお前、ヘンなスイッチ入ってんだろ!?」
(自業自得だ、バカ)
物言う口をキスで塞いでやる。誠が大樹のことを求めるようになるまで、少しも時間はかからなかった。
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