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おまけSS ずっと求めていた熱【前編】 ★
ゴールデンウィークを迎えた金曜の夜。玲央は仕事を終えるなり、急いで帰宅した。
部屋の鍵を開け、靴を脱ぎ捨てて玄関に上がる。数秒単位の行動でさえもどかしい――そう思うのも無理はない。
「あ、玲央さん、おかえりなさ――」
「雅っ!」
リビングから出迎えてきた、愛しい恋人に抱きつく。
存在を確かめるかのように腕に力を込め、改めて口を開いた。
「おかえり、雅」
雅が警察学校に着校してから一か月と数週間。今日は、初めて外出泊が許可された日だった。
「はい。ただいまです、玲央さん」
背に腕が回される。しばらくそうして抱き合ったあと、どちらからともなく体を離して、口づけを交わした。
「ん、ふ……っ」
すぐさま歯列を割られて、熱い舌先が口腔へと入ってくる。雅のキスはいつだって噛みつかんばかりの勢いだが、いつにも増して性急さを感じた。
「んっ、ん、んん……」
口を大きく開けられ、貪るように舌を絡めとられる。
息苦しさを感じるほどの激しいキスに、ずるずると体勢を崩して床に座り込むも、相手を求める想いはこちらも同じだった。自ら舌を差し出して、雅のものを追う。
「っは……ん」
口づけから解放されると、口元を伝っていた唾液を指先で拭われる。すみません、と雅が小さく謝った。
「つい、がっついちゃいました」
「……今日くらいはいい」
「玲央さん?」
「すげー寂しかった……雅に会いたくて、しょうがなかった」
想いが溢れて、ありのままに心情を吐露する。
会えない日々は、一般的には短いものだったかもしれない。けれども、どうにも長く感じられて、身も心も満たされぬ玲央がいた。
「俺も、玲央さんに会いたかった」
言って、雅は再び唇を重ねてくる。同時にシャツの裾から手を忍ばせてきて、滑るような手つきで体を弄られた。
大きな手が腹からみぞおち、そして胸元に辿り着くと、小さな突起をきゅっと摘ままれる。それはすぐに反応を見せた。
「っ、雅……」
こんなところで、と言おうとしたのだが、熱っぽいキスでうやむやにされる。
雅の責め立ては止むことがない。爪を立てて痛いくらいに突起を引っかかれ、潰れるのではないかと思うくらいに強くこねられ――こちらのことを知り尽くした動きに、翻弄されていく。
「んはっ、胸ばっか……やだ、って」
乳首が赤く腫れてきて、吐息交じりにやっとの思いで伝える。雅は艶っぽく微笑んだ。
「玲央さんのここ、もうキツそうですもんね。欲しいですか?」
スキニーの上から、膨れあがった昂ぶりをいやらしく撫でまわされる。
しかし、玲央が欲しいのはそこではない。軽く首を振り、相手の手を掴んで下部へと持っていった。
「こっちが、いい……」
懇願するように雅の顔を見上げれば、彼は珍しく目を瞠らせていた。
「はは、今日の玲央さんは素直なんだ」
「悪いかよ」
「ううん、すごく好き」
額に口づけられたかと思うと、流れるような動作でベルトを緩められて、スキニーも下着も下ろされる。
「玲央さん、好きな体勢取ってください」
言われて、玲央は四つん這いになって腰を上げた。一方で、雅は己の指を唾液で濡らしたあと、ゆっくりと玲央の窄まりに潜り込ませてくる。
「あっ……ぁ……」
自分よりも男らしく骨ばった指の感触。それが体内に入ってきただけで、玲央の体は快感に震えた。
「すごい――玲央さんが俺の指に絡みついてくる」
「あ、んっ……あ、はぁっ……」
中を荒っぽく掻き回され、感じやすい箇所を執拗に擦られ、そこはあっという間に蕩けていく。背後から抱きすくめられながら、玲央は襲い来る快感に身を震わせた。
「あっ、ああっ……み、みやび、も、イク」
「我慢しなくていいですよ。可愛くイッちゃって、玲央さん」
雅は耳元で低く囁き、耳朶に舌を這わせては甘噛みしてくる。それが引き金となって、一気に高みへと昇りつめた。
「ひあっ……あ、あぁあぁっ」
込み上げてくる衝動に抵抗する間もなく、床に白濁がびしゃびしゃと飛び散る。
一か月ぶりの行為とはいえ、あまりの堪え性のなさに羞恥を感じたが、情欲の前では何ら意味を成さない。
「んっ……あ、雅……」
「玲央さん。俺も……もう我慢できない」
誘うように名を呼べば、余裕のなさそうな声が返ってくる。後ろに触れたものの熱さにゾクリとした。
「ん、あぁぁッ!」
雅の欲望が突き入れられる。久々に感じる熱と硬さに、胸がいっぱいになって視界が涙で滲んだ。
「玲央さんってば締めつけすぎ。こんなじゃ、もたないですよ?」
「だ、だって、きもちい――ずっと、雅が欲しかったから……あッ、ん!」
言い終える前にがっしりと腰を掴まれて、早々に速いペースで揺さぶられる。互いに余裕のなさを感じた。
「あっ! ン、あ、あぁ……ッ」
「っ……俺、本当にもたないかも」
内壁を鋭く抉るように腰を送り込まれる。奥深くまで貫かれるたび、そこは求めていた快感に悦んでは彼のものを締めあげた。
「んっ、あ、あっ、あぁっ……」
律動はますます速くなり、息継ぎもままならぬほどに快楽へ溺れていく。
もはや理性なんてものは少しもなかった。何も考えられず、ただ雅のことを追い求めては自ら腰を振っていく。
「玲央さん、それヤバい」
「ん、んッ……みやび、みやび……っ」
激しい揺さぶりに二度目の限界が見えてくる。
相手の名を何度も繰り返しては、与えられる刺激に身悶えして、
「あっ……あ、あぁっ!」
背を仰け反らせて達する。体内の男根をきつく締めたところで、雅が腰を退いた。
「っ!?」
突然の喪失感に驚いていると、間髪をいれずに体へと熱い体液がかけられる。
いつもは――避妊具の有無関係なく――体内で欲望を放つのを感じていたため、困惑せざるを得なかった。
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