131 / 142

おまけSS ずっと求めていた熱【前編】 ★

 ゴールデンウィークを迎えた金曜の夜。玲央は仕事を終えるなり、急いで帰宅した。  部屋の鍵を開け、靴を脱ぎ捨てて玄関に上がる。数秒単位の行動でさえもどかしい――そう思うのも無理はない。 「あ、玲央さん、おかえりなさ――」 「雅っ!」  リビングから出迎えてきた、愛しい恋人に抱きつく。  存在を確かめるかのように腕に力を込め、改めて口を開いた。 「おかえり、雅」  雅が警察学校に着校してから一か月と数週間。今日は、初めて外出泊が許可された日だった。 「はい。ただいまです、玲央さん」  背に腕が回される。しばらくそうして抱き合ったあと、どちらからともなく体を離して、口づけを交わした。 「ん、ふ……っ」  すぐさま歯列を割られて、熱い舌先が口腔へと入ってくる。雅のキスはいつだって噛みつかんばかりの勢いだが、いつにも増して性急さを感じた。 「んっ、ん、んん……」  口を大きく開けられ、貪るように舌を絡めとられる。  息苦しさを感じるほどの激しいキスに、ずるずると体勢を崩して床に座り込むも、相手を求める想いはこちらも同じだった。自ら舌を差し出して、雅のものを追う。 「っは……ん」  口づけから解放されると、口元を伝っていた唾液を指先で拭われる。すみません、と雅が小さく謝った。 「つい、がっついちゃいました」 「……今日くらいはいい」 「玲央さん?」 「すげー寂しかった……雅に会いたくて、しょうがなかった」  想いが溢れて、ありのままに心情を吐露する。  会えない日々は、一般的には短いものだったかもしれない。けれども、どうにも長く感じられて、身も心も満たされぬ玲央がいた。 「俺も、玲央さんに会いたかった」  言って、雅は再び唇を重ねてくる。同時にシャツの裾から手を忍ばせてきて、滑るような手つきで体を弄られた。  大きな手が腹からみぞおち、そして胸元に辿り着くと、小さな突起をきゅっと摘ままれる。それはすぐに反応を見せた。 「っ、雅……」  こんなところで、と言おうとしたのだが、熱っぽいキスでうやむやにされる。  雅の責め立ては止むことがない。爪を立てて痛いくらいに突起を引っかかれ、潰れるのではないかと思うくらいに強くこねられ――こちらのことを知り尽くした動きに、翻弄されていく。 「んはっ、胸ばっか……やだ、って」  乳首が赤く腫れてきて、吐息交じりにやっとの思いで伝える。雅は艶っぽく微笑んだ。 「玲央さんのここ、もうキツそうですもんね。欲しいですか?」  スキニーの上から、膨れあがった昂ぶりをいやらしく撫でまわされる。  しかし、玲央が欲しいのはそこではない。軽く首を振り、相手の手を掴んで下部へと持っていった。 「こっちが、いい……」  懇願するように雅の顔を見上げれば、彼は珍しく目を瞠らせていた。 「はは、今日の玲央さんは素直なんだ」 「悪いかよ」 「ううん、すごく好き」  額に口づけられたかと思うと、流れるような動作でベルトを緩められて、スキニーも下着も下ろされる。 「玲央さん、好きな体勢取ってください」  言われて、玲央は四つん這いになって腰を上げた。一方で、雅は己の指を唾液で濡らしたあと、ゆっくりと玲央の窄まりに潜り込ませてくる。 「あっ……ぁ……」  自分よりも男らしく骨ばった指の感触。それが体内に入ってきただけで、玲央の体は快感に震えた。 「すごい――玲央さんが俺の指に絡みついてくる」 「あ、んっ……あ、はぁっ……」  中を荒っぽく掻き回され、感じやすい箇所を執拗に擦られ、そこはあっという間に蕩けていく。背後から抱きすくめられながら、玲央は襲い来る快感に身を震わせた。 「あっ、ああっ……み、みやび、も、イク」 「我慢しなくていいですよ。可愛くイッちゃって、玲央さん」  雅は耳元で低く囁き、耳朶に舌を這わせては甘噛みしてくる。それが引き金となって、一気に高みへと昇りつめた。 「ひあっ……あ、あぁあぁっ」  込み上げてくる衝動に抵抗する間もなく、床に白濁がびしゃびしゃと飛び散る。  一か月ぶりの行為とはいえ、あまりの堪え性のなさに羞恥を感じたが、情欲の前では何ら意味を成さない。 「んっ……あ、雅……」 「玲央さん。俺も……もう我慢できない」  誘うように名を呼べば、余裕のなさそうな声が返ってくる。後ろに触れたものの熱さにゾクリとした。 「ん、あぁぁッ!」  雅の欲望が突き入れられる。久々に感じる熱と硬さに、胸がいっぱいになって視界が涙で滲んだ。 「玲央さんってば締めつけすぎ。こんなじゃ、もたないですよ?」 「だ、だって、きもちい――ずっと、雅が欲しかったから……あッ、ん!」  言い終える前にがっしりと腰を掴まれて、早々に速いペースで揺さぶられる。互いに余裕のなさを感じた。 「あっ! ン、あ、あぁ……ッ」 「っ……俺、本当にもたないかも」  内壁を鋭く抉るように腰を送り込まれる。奥深くまで貫かれるたび、そこは求めていた快感に悦んでは彼のものを締めあげた。 「んっ、あ、あっ、あぁっ……」  律動はますます速くなり、息継ぎもままならぬほどに快楽へ溺れていく。  もはや理性なんてものは少しもなかった。何も考えられず、ただ雅のことを追い求めては自ら腰を振っていく。 「玲央さん、それヤバい」 「ん、んッ……みやび、みやび……っ」  激しい揺さぶりに二度目の限界が見えてくる。  相手の名を何度も繰り返しては、与えられる刺激に身悶えして、 「あっ……あ、あぁっ!」  背を仰け反らせて達する。体内の男根をきつく締めたところで、雅が腰を退いた。 「っ!?」  突然の喪失感に驚いていると、間髪をいれずに体へと熱い体液がかけられる。  いつもは――避妊具の有無関係なく――体内で欲望を放つのを感じていたため、困惑せざるを得なかった。

ともだちにシェアしよう!