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おまけSS 七夕の願い
「あっ、短冊だ!」
スーパーマーケットに入って開口一番、誠が言った。店内の入口には七夕の笹飾りが飾られていて、もうそんな時期かと大樹も気づかされる。
「書いていくか?」
「んー、いいや。なんか子供の字ばっかりだった」
(お前の字と変わらないだろうに……)
思わずツッこみたくなったが、だんまりを決めて買い物かごを手に取った。
スマートフォンのメモを見つつ、目当ての品をかごに入れていると、誠が「そういえば」と話しかけてくる。
「俺らも短冊書いたよな? 覚えてる?」
「ああ、小学生の頃だったか」
低学年の《せいかつ》の時間だったはずだ。教室に笹が飾られて、生徒みんなで短冊を飾った記憶がある。
「俺さー、『身長が伸びますように』って書いたのに伸びなかったなーって。……で、大樹はなんて書いた?」
「忘れた」
「ええ?」
嘘に決まっていた。本当は覚えているのだけれど、今は口にするようなムードでもない。
(『大好きな親友と、ずっと一緒にいられますように』なんて、よく恥ずかしげもなく書いたもんだな)
それだけ純粋だったのだろう。誰にも見られないように、一人でこっそりと笹に短冊を吊るしたことをぼんやり覚えている。
今でこそ形は違うが、それでも願い自体は変わらないわけで――。
(ずっと一緒に。あの頃の願いは、叶ったと思っていいのだろうか)
甘ったるい気持ちに頬がふっと緩むのを感じた。誠が不思議そうな顔で首を傾げていたが、知らぬふりをして買い物を続けたのだった。
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