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おまけSS 酔っ払いにほだされて…(3)【前編】 ★

 ピンポーン、と深夜だというのにドアチャイムが鳴らされた。  こんな時間に何事だろうか。用心しつつ、雅が覗き穴から確認してみれば、 「どうしてあなたが……」  予期せぬ来客に眉根が寄る。  そこには、雅が苦手としている宮下の姿があった。  泥酔した様子の玲央を連れていて、今日は舞台公演の打ち上げがあると聞いていたことから、事情を察することはできるが……、 「後輩くーん、開けてよー。共同玄関抜けたはいいんだけど、さすがに家主いる状態で部屋開けるまでは……」 「そんなことしたら普通にキレます。というか、勝手に人の鍵使わないでくださいよ」  苛立ちを感じながらドアを開ける。  即座に、宮下から玲央の体を引っぺがし、――ついでに抱かれていた肩のあたりを手で払って――何も異常がなさそうなのを確認した。  それから、共同玄関で使ったであろう鍵を返すよう、手で大げさにジェスチャーする。 「うっわ、俺って信用ねーの。鍵だって、しーちゃんが普通に出してくれたのにさー」 (ああもう、玲央さんってば……)  出された鍵をひったくるように受け取りながら、頭を抱えた。  どうして彼は隙だらけなのだろうか。自分では隙がないと思っているのかもしれないが、酒に酔ったときは特にひどい。そういったところは、恋人として気が気でないし、改善してほしいところだ。 「とにかくお世話様でした。……不愉快なので、さっさと帰ってください」 「あ、待って待って。せっかくの機会だしさ~、二人でしーちゃん犯すのとかどう? 下の方は後輩君に譲るからさあ」 「………………」  無言でドアを閉めて二重ロックをかける。これ以上相手にする必要は皆無だろう。 (あとは玲央さんをどうするかだけど)  うつらうつらとしている玲央をソファーに座らせ、とりあえず水の一杯でも飲ませようと考えたところで、 「雅っ」 「うわ!?」  体当たりでもするような勢いで、玲央が正面から抱きついてくる。不意を突かれた雅は、思わず尻もちをついてしまった。 「いったあ~。いきなり何するんですか……ってあの? 玲央さん?」  目を瞬かせながら名を呼ぶ。 「おい、なにボサっとしてんらよ。腰、ちょっと浮かせろよ」  玲央はそう言いながら、雅のスウェットパンツに手をかけていた。まさかと思いつつ腰を上げると、何の情緒もなく下着ごと下ろされる。 「ええっと、いきなりどうしたんですか? なんか俺、脱がされてますけど……」 「うるせーなァ。俺様らって、そーゆー気分になるときがあんらよ」  明らかに目が据わっているし、呂律も怪しいで、どうにも落ち着かない。しかし、自身を手で包み込まれれば、体は正直なもので期待にそこが膨らんでしまう。 「ん……」  柔らかな舌が根本から這っていく。玲央は丹念に屹立全体を舐めまわしたあと、先端にちゅっと吸いついて、上目遣いでこちらの様子をうかがってくる。  マズい、と反射的に思った。唾液を絡めながら舐めしゃぶられ、裏筋の部分を指で扱かれ――少し前まで感じていた戸惑いも、次第にどこかへ消え去っていく。 (玲央さんからしてくれること、あんまりないし)  ふと思い立って、テーブルに置いてあったスマートフォンに手を伸ばす。カメラアプリを動画モードにして玲央に向けた。 「ん……なに?」 「ええっと、こんな玲央さんレアだなって思って。やっぱり駄目ですかね?」 「いーけど……撮るなら、ちゃんといい画で撮れよお?」  いつものように言って、玲央は再び顔をうずめる。淡い期待はしていたものの、予想外の展開だった。 (い、いいんだ。ますます調子乗っちゃうかも……)  こうなってしまうと止まらないのは、自分でもよくわかっている。 「玲央さん、奥まで咥えられる?」 「っ、ん」  こちらの言葉を素直に聞き入れ、玲央が屹立を深く呑み込んでいく。やや苦しそうにしながらも、唇で締めつけるようにして口淫を続けた。 「んっ……ん、ん」 「いい子。そのまま続けて?」 「っは、ん、きもちい?」 「ん……蕩けちゃいそうなくらい、すごく気持ちいい」  優しく頭を撫でれば、潤んだ瞳と目が合う。  酒のせいばかりではなく、彼自身も興奮しているのだろう。証拠に、もじもじと下半身をすり合わせている様子が見て取れた。 「う、ん……んっん」 「っ……玲央さん、もう」  やがて限界を感じて声をかけると、玲央が先端をきつく吸いあげてくる。一気に意識を持っていかれて、屹立から欲望が勢いよく噴き出した。 「んんんっ……ん、ん……ッ」  玲央の喉が小さく上下する。しかし、すぐにむせてしまったようで、口元から白濁が溢れ出た。 「飲まなくていいですよ。ほら、全部吐き出して?」 「んぅ……」  手を差し出すと、迷わず玲央は口の中にあるものを吐き出す。それから、物欲しそうな顔を向けて、 「雅……」  ねだるように甘ったるい声で名を呼ばれては、堪ったものではない。ゾクリと胸の内が疼いた。 「玲央さんってば、動画撮ってるの忘れてるでしょ? こういったのも全部残っちゃいますよ?」 「……いーから、はやくしろよ」 「じゃあ、カメラに向かってちゃんとおねだりして? どうしてほしいんですか?」  言えば、玲央の視線がスマートフォンのカメラに向けられる。そして――、 「雅、はやく、抱いてほしい……」  愛らしい懇願に胸が疼く。雅は微笑んで、玲央のことをベッドに誘ったのだった。

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