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おまけSS 海と青空のもとで… ★
「海だああああーーッ!」
眩しい真夏の太陽の下。広大に広がる海を目の前に、誠は声をあげた。
「はしゃぐなよ、ガキじゃないんだから」
背後から、呆れたような大樹の声がして振り向く。
レンタカーを一時間ほど走らせ、二人は海水浴デートに来ていた。
すでに水着に着替えており準備は万全だ――これが、はしゃがないでいられようか。
「荷物、コインロッカーに入れて来たんだろ?」
そわそわと誠が訊くと、大樹は「ああ」と頷く。
「もちろん、小銭は防水カプセルに入れてあるから必要になったら……」
「じゃあ泳ごうぜ!」
「早速だな」
「えー? 海に来て、泳がないでどうすんだよ!」
言いつつ、さっと準備運動を終えて、ドキドキしながら波打ち際まで駆け寄る。寄せては返す波に足を入れると、ひんやりとした心地の良い冷たさが伝わってきた。
「うおおっ! 冷たくて気持ちいい~!」
「泳ぐのはいいけど、あんまり沖の方まで行くなよ?」
「あっ、大樹大樹! あの岩まで競争しよ!」
「人の話を聞け、バカ犬」
「はい、よーいドーン!」
大樹の言葉には一切耳を傾けず、海の上に露出している岩を目指して泳ぎだす。
運動神経には自信のある誠だったが、あとになって少し後悔することになるのだった。
「思ったより距離あったあ……」
目的地に到着し、息を吐きつつ上陸する。浜辺から見たときはそうでもなかったものの、見た目以上に遠く離れており、意図せず本格的に泳ぐ羽目になってしまった。
「おいバカ。潮の流れに捕まって流されでもしたら、シャレにならないだろうが」
硬い岩肌の上に腰を落ち着けていると、あとからやってきた大樹に頭を叩かれる。
「イテッ! ここまで遠いとは思わなかったんだよ!」
「ったく……遊びで来たのに、水泳の授業でも受けた気分だ」
「ちぇっ、大樹はうっせーなあ」
「……俺たち、恋人だろ? あまりに色気がなさすぎるんじゃないか?」
大樹が隣に座りながら口にした。突然の甘ったるい言葉に、誠の頬がじんわりと赤く染まっていく。
「じゃ、じゃあなに? 砂浜で追いかけっこでもしろとか言うのかよ?」
照れ隠しに言ったら、大樹は頬を緩ませた。
「別にそんなことは言ってないだろうが。でもまあ、これはこれでいいかもな。思わぬところで二人きりになれたし」
「わっ……お、おい大樹っ!」
不意に肩を抱かれ、胸がドキリと音を立てる。触れ合った肌から、大樹の温かな熱が伝わってきて、ますます鼓動が速くなるのを感じた。
「う~……な、なんかヘン」
「ヘンって?」
「だって、外でくっつくコトとかねーし。ましてやこんな格好で……とか」
「お前な」
「え?」
深いため息が聞こえたかと思えば、ぐっと体を引き寄せられた。
大樹の手がするりと移動して薄い胸板をなぞってくる。いやらしさを感じる手つきに、思わず誠は身をよじった。
「ちょ、どこ触ってんだよっ」
「お前が煽ったのが悪い」
「俺がいつ煽った!?」
「別にいいだろ。この角度じゃ、海岸からも見えやしない」
大樹はすっかりその気になっているらしく、瞳には意地悪な色が滲んでいた。
今度は股間に手が伸びてきて、水着の上から絶妙な力加減で擦られれば、否応なく体の芯が疼いてしまう。
「あっ、ん……こ、こーゆーの、なんて言うか知ってる?」
「なに?」
「あ、《あおかん》つって、いけないこと……」
「そうだな。よく知ってたな」
「ばっ、バカにしてっ……ん、やぁっ」
与えられる刺激に反応を見せ始めた屹立を、やんわりと揉みしだかれる。水着の布地が擦れて多少の痛みを感じるも、それすらも快感に思えてならなかった。
何よりも、青空の下でふしだらな行為をしているという羞恥が、誠のことを追い立てていく。
「ここ、外なのに……っ」
「嫌?」
いつだって大樹は確かめてくるし、こちらが本当に嫌がれば、それ以上のことはしてこないのだろう。けれど――、
「俺が本気で嫌だって言ったこと、今まであったかよっ」
お返しだとばかりに、大樹のものを同じように握ってやると、彼が小さく息を呑む気配がした。
「大樹のスケベ」
「……うるさい」
大樹はムッとして手の動きを速める。感じやすい括れの部分を集中的に責められ、誠の腰が小さく震えてきた。
「あっ、や、あ……っ、そこ、だめだって……ッ」
頭を振るも、なおも大樹の責め立ては止まることがない。今いる場所も忘れて喘いでは、すがるように相手にもたれかかった。
「ん、んっ、でちゃうっ……でちゃう、からぁっ」
「いいよ、出しちまえよ」
「や、あっあ、ん……んっ、あぁッ」
あっという間に終わりを迎えて、水着の中でじんわりと熱が広がる。
誠は荒い息を吐きながら、頬を膨らませて大樹の顔を見上げた。
「どーすんだよう。海パン汚しちゃったじゃん」
「あとで洗ってやるし、見た目的にはわからないだろ」
「……つーか、お前のは」
気まずく問いかけたら、大樹は涼しい顔で、
「治まるのを待つからいい」
「え、えっと、少しくらいなら……もっと、してもいーけど?」
「ここ、外なんだが」
「お前が言う!?」
こちらの反応に大樹がクスクスと笑う。
「いいよ、俺は。雑菌でも入ったら大変だし。その代わりに……帰ったら」
「……う、うん」
顔を間近で覗き込まれて、再び心臓が早鐘を打ち始める。
そっと瞳を閉じれば、軽く唇を重ねられた。恋人らしいムードにうっとりしかけたが、海水の塩辛い味がして二人とも苦笑したのだった。
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