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逃走②
その頃ケイは診療所から抜け出し、森の中へ逃げていた。
あのノイルと言う男の事は信用してない訳では無いが、このまま彼に着いて行くのは本当に正しいのだろうかと不安になった。
ここで暮らせばいいと言っていたが、所詮は異世界の獣だ。
何を企んでいるのか分かったもんじゃない。
兎に角帰れる道を探そうと最初にいた場所に向かっていたが雨が降ってきた。
「最悪……」
一旦雨宿り出来そうな場所へ避難しようと踵を返したその時、目の前に最初に出会った牛の獣人がいた。
もう見つかってしまったのかと、どうしようと考える間も無く牛はケイを捕まえた。
「クソッ!!
離せって……」
なんとか振り払おうとするが、逃げる事など当然出来る筈もない。
すると牛は何やら布を取り出し、ケイの鼻と口を覆った。
「んん………」
その布からは少し甘い匂いがした。
その瞬間頭がくらくらして気が遠くなり、意識を失ってしまった。
「捕まえたか?」
意識を失ったケイを抱える牛に言葉を掛けるのは先程の狐の獣人だ。
「ああ。
あとは任せたぞ」
「分かってる。
ノイル大尉にバレたら台無しだ」
実は彼ら、恐らく異世界からやって来たであろうケイを研究機関に売る気だった。
その見返りに報酬を得て、あわよくば昇進出来たらなんて邪心を抱いていた。
「しかし、ノイル大尉は何故こいつを匿う気なのだろうな。
勿体無い」
「さぁな。
あの人はお人好しだからな」
そして牛はケイを抱えこの場を離れた。
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