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白銀の……①

「はぁ……はぁ……」 研究所から逃亡し、ケイは走る。 兎に角誰にも見付からないような場所まで逃げなければと風を切る。 走り続け、山の中へと逃げ込んだケイはようやく足を止めた。 外はすっかり暗くなり、この黒い巨体の方が夜は目立たないだろうかと元の姿へ戻るか迷った。 しかし改めて冷静になると自身の姿に驚愕するばかりだ。 まぁ、自分の姿を鏡で見た訳ではないのでどんな容姿なのかははっきりとは分からないが、獣の姿であることには違いない。 しかし、今困惑している余裕などなかった。 命が危険にさらされていると不思議と今の自身の状況も受け入れられた。 これからどうするか……? 夜は見付かりにくいとは思うが、匂いを辿られては見付かってしまうので、考えた末に高所恐怖症ながらも木の上に登ることにした。 半分はジャガーだ。 木登りはお手の物で今夜はここで眠ることにしたが、見付かってしまうかもしれないと言う恐怖と、高い所にいる恐怖でほとんど眠れなかった。 夜風の音も異様に大きく聞こえた。 翌朝、何とか一夜を明かし木の上から降りてギャペラの姿に戻った。 しかし、食事もロクに取っていない上睡眠もままならず疲労は蓄積されている。 「ヤベッ……ふらふらする……」 目眩がし、視界も暗くぼやけてきて体調が暗転し倒れてしまった。 「はぁ……」 意識が遠退く中、人の気配がした。 微かに捉えた誰かの足に逃げなければと身体を起こそうとするも結局気を失ってしまった。

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